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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 4-3

 眼下に目を凝らしたが刑事らしき姿は見えない。
「おんなじだったよ!」
 やがて合流した理央んは、カフェラテとショートケーキを前に上機嫌で報告した。
 香南のメモと比べて、ネットカフェの防犯カメラの位置や台数に変化はなし。
 プリンタコーナーには、飲物を機器のそばに置かないようにと大きな貼り紙がしてあった。三台並ぶ真ん中、香南が使ったプリンタは型番も製品番号もメモしておいた物と同じ。店が修理を頼んだこともラーダの報告で確認済みだ。警察の差し押さえもない、ということは、阿妃佳が捕まっているのはこの店がらみではない。
「すごいなあ。香南ちゃん天才だ~」
 説明すると理央んは興奮気味に褒める。「気を取り直して」主張した。
「真執、プリンタのことしつこく聞かれたって。ってことは、警察はどこか別のプリンタと勘違いしてるか、それとも……犯人が送り付けた本物の犯行声明がどこで印刷されたのか、押えたのかもしれない。まずいな。早くしないと警察に先を越されちゃう」
「えーっ! 犯人を捕まえられればそれでいいんじゃないのぉ?」
「頭ワルイんじゃないのっ!! そうなったら少女探偵団の出番がなくなるじゃない!」
「…うん。ごめんなさい」
 正確には自分の腕の見せ所がなくなる、だ。しゅんと謝る理央んに腹が立つのは正論だから、ということくらい香南にだってわかる。だけど警察なんかには負けない。あたしは頭がイイのに、少女探偵団の団長にすら成れなかったらー
「……理央ん、ラーダのソフトもう入れたでしょうね?」
 ラーダは香南たちに、メールの暗号化ソフトを送ってくれていた。
「ううん! 理央んお母さんのパソコン使ってるから、勝手にソフト入れたりできないよ~」
 くらげのように体を揺らすのに、香南の頭は沸騰寸前になる。
「あたしもママの使ってるけど!! うちのママ、ネットとゲームくらいしかしないから、セキュリティも含めて管理はあたしがしてるの。ソフトの一つや二つ増えたってバレやしないって!」
「でも、ママに嘘つくのはなあ……」
「何言ってんの?!  親なんて騙してなんぼ! 家庭内は弱肉強食、騙さなきゃこっちが騙されるだけだって!」
 理央んが目を丸くしたのには気付きもしなかった。警察の目が光っている今、セキュリティには細心の注意を払わなくてはならない。今は「ホーニー」の処理もまずい。警察は容疑者の周辺は徹底的に調べるから、阿妃佳の容疑が晴れなければ、自分や理央んにもとばっちりが来る。不純異性交友で余計な口実を与えるのは―
(!)
 突然気付いた。
「理央ん。真執は刑事さんに尾行されてるって言ってたよね」
「うーん、確かそんな気がする」
「そんなはずないって! 聞いてみなきゃ……ちぇっ! また出ねえでやんの!」
 真執の携帯からは留守メッセージが流れる。
 長年の仇敵のように香南は携帯を睨み、理央んは満足そうにケーキのクリームを舐めながらそれを眺めた。



 小松空港には迎えの車が待っていた。
 そのまま家に着き、門から日本庭園の間をしばらく歩くと執事がドアを開けた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ただいま。翆《みどり》さんも変わりないかい」
「お陰さまで。奥様はただ今お茶の方のお稽古です。最後の席にはお嬢様が参加なさってもいいとお言付けを賜っています。それともお部屋でお休みになりますか」
 黒のパンツスーツに蝶ネクタイが似合う女性執事が尋ねる。
「一席、かな」
 着流しに着替えると茶室に赴く。母の弟子や生徒たちは真執のことは知っているので何ということもない。真執が女であることは知らないかもしれないが。
 抹茶の香りとのど越しが気持ちを落ち着かせる。それも母の狙いだったのかもしれない。稽古が終わると、紺の着物姿の母と茶室で向きあった。
「あなたは何をやっているの?」
 母の親族筋の政治家から―たくさんいるので誰かはわからないが―真執について苦言が入ったらしい。
「大阪情勢が気になるのは当然です。ですがそれはビジネスの範囲でなさい。下手に政治に手を出したらこの家は守れない。真執。お父様が帰ってくるまで、江礼資源開発を守るのはあなたなんですよ」
「社長はお母様だろう」
「私はビジネスのことなど何もわかりませんよ」
(嘘つけ)
 この人ははやろうと思えば会社の舵取りくらい出来る。それでも何もわからないふりをして、お茶とお花の教授に明け暮れる。
「お芝居をやるのは結構。若いうちに楽しんだことは財産になります。ですが、政界にだけは軽い気持ちで手を出したりしないように」
 元首相の孫にして政略結婚で父と一緒になり、彼が有罪判決で収監されたことを「舵取りの失敗」と蔑まれている彼女の実感かもしれなかった。真執には返す言葉もない。
(だけど僕は阿妃佳を裏切れない)
「わかったら行きなさい。専務さんがお待ちですよ」


 青い光がほんのりと赤みを帯びた木の床に落ちる。
 江戸末期製のステンドグラスがはまった応接室で、江礼資源開発の専務は真執に次々と報告をこなした。
「役員会の決定を厳守してください。自衛隊関係との直接取り引きはしないように。うちは『中立』でいきます」
 自衛隊はこっそり真執の会社に石油の買い付けを打診していた。当然だ。戦車を動かすにも船を浮かべるのにも、戦争には石油がいる。
「大阪方にもですか」
「ええ。売りません」
(さと美ちゃんや、探偵団の連中は怒るだろうな。でもこれがビジネスだ)
「その代わり『戦後』の復興時は、被害にあった地域には、大阪でもそれ以外にでも一時利益抜きで安く提供しましょう。この国で商売させてもらっている者の務めです」
 にこりと笑って見せる。
「大丈夫。たいしたことにならず終わります。国内戦を長期化させても良いことは何もない」
 見上げていた頭の薄い専務が気づいたように問う。
「……大阪以外、が被害に合うこともあるとお考えですか」
「どんな手を出してくるかわかりませんよ、大阪は」
「……報道されていない現状ですが、自衛隊は既に待機状態に入っています」
 先月から営業を休止している生駒山頂奈良側の遊園地は、実質自衛隊の駐留地となった。
「国道三○八号線で府境を抜ければ大阪の中心街まで一直線です。……例えばここ、先日攻撃を受けた大阪城などそのまま十三号に入った脇ですから」
 首を傾げた真執に地図を示す。
「戦争に、突入ですかね」



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テーマ : ミステリ
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