TOP > スポンサー広告 > title - 少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 5-1TOP > 少女探偵団 大阪戦争? 福あり! > title - 少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 5-1

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 5-1

 母は静かに言った。
「阿妃佳ちゃん。私にできることはある?」
 沙月に連れられて家に帰った。刑事はしばらくは聴取に来なくていいが必要があったら呼ぶと言っていて―
「江礼さんは地位もあるから、色々やらなければならないこともあるのだろうけれど、あなたはごく普通の子なのよ」
 母が綺麗な物だけを集めた別棟の仕事部屋。母のお客さんと同じようにテーブルを挟んで阿妃佳は座る。
「私が、ごく普通?」
「そう。私にとっては特別に大事な。でも普通の女の子」
 妙な顔をしてしまったらしい。
「あなたは普通の素敵な女の子よ。どんなことを楽しんでもいい。本もゲームも、ファッションも、江礼さんとだって食べ歩いたりおしゃべりをするのなら、いくらだって」
「……」
「……阿妃佳ちゃん。助けは必要?」
「特にそうは思わないけれど」
 助けてもらえるのは、探偵団のことを知っている人間だけ。
「ごめんなさい」
 微笑んだまま、母は白い壁の前に鎮座するハーブボトルから一本選ぶように促した。
 溢れる色の洪水から一つをテーブルに置く。上が淡いピンク、下が薄い灰緑の沈んでいくほど静かな色。
「このボトル、どんな感じ?」
「……つつましく立ってる」
 母が黙っているので言葉を付け加える。
「何があってもじっと耐えて、目立たない」
(私は思い上がっていたのかもしれない)
 「司令」なんてあだ名で呼ばれて、「部下」たちに指図をして、もう少しで団を卒業したら普通の子に戻れるひとかどの人物のように勘違いしていた。そう思いたかったのだろう。けれど現実は違う。
 母やその仲間たちは人間には無限の可能性があると言う。
 けれど阿妃佳は「人間とは定まっているもの」だと思う。
 運命がではない。未来はどんな事が起こるかわからない。能力やH点、頭の良さなど中身のことだ。例えば八十の人間が人生の前半に百のことをしたら、晩年に二十くらいになって犯罪でも犯すかもしれない。
 自分はその定まりの中、目立たずに暮らす。そんな色のボトルを選んだ。
「下の色だけ見ると、どう?」
「……木や草みたい。動かないて、じっと立ってる」
「上の色は?」
 わからない。明るい? 違う。明るすぎる色は好きじゃない。華やか、だったら自分は選ばない。
「特に何も感じない」
 沈黙の後、やっと答えた。
「これと薄い水色のとで迷ったんだけど。こっちの方が見てて楽な気がしたから」
 下が灰緑ーオリーブグリーンという色だと母は教えてくれたーで上が水色のボトルを母が隣に並べる。空よりも海よりも薄い変わった水色だ。悲しい色? 違う。涙の色、などと言うほどの感傷はない。今度も何も感じないと言うしかなかった。
 母は日々こんな風に癒しの仕事をしているのだろう。母が楽しくて、お客さんも「癒されて」喜んでいるならそれはそれでいい。阿妃佳のことばかり考えてため息をついていた頃には戻ってほしくない。
 けれど、人が人を癒すことなど出来るのだろうか。
(少女探偵団が犯人を挙げても、殺された人を取り戻すことが出来ないように)
 母に二本のボトルを押付けられてセッションは終わった。母屋へ戻ろうとした時、
「そうそう! あなたのことを心配してわざわざ足を運んでくださった方がいるのよ。L社って電器メーカーの社長さんで、前に清大会って集まりに呼ばれて色の話をした時にご縁があったのだけれど、会ってみる?」
 そうか。
(だから私が知っていてー)
「お願いします」
 今はまだ団長だから、二万年の責任を肩に、
(私が動かなくては!)

                   ※

 母の仕事場に入った時、前と同じように理央んは目を輝かせた。真執もうれしそうにローズクオーツを眺めている。母のお客さん(クライアントというらしい)も部屋に入ったとたんに喜ぶそうだ。
 阿妃佳にはわからない。こんな宝石箱めいた部屋でどうして平気なのか。
 自分がその「きらきらりん」にふさわしいと思えるのだろうか?
 レースのカーテンが閉じられた窓に、胸までの黒髪をばさりと散らしたいささかきつい顔の美女が寄りかかっていた。女でも目のやり場に困るほど付き出した胸に、膝上のスカートから伸びる見事な脚線美。阿妃佳を警察から連れ帰った女性だ。
「理央んは初めてね」
 神奈川県警警部補、黒宗沙月を捜査会議のオブザーバーとして紹介する。彼女は少女探偵団OGだから団の秘密を共有することが出来る。
「知ってる! 警視庁の偉ーい人の新しい奥さんだよね!」
「警視総監のね」
 はしゃいだ理央んに香南が気怠く教える。
「三十くらい年が離れてるんだよね? すっごく若い奥さん、って聞いてたんだけどそんなに若くないなぁ」
「理央ん!」
「……正確には二十七違い。高校生と比べたら若くないのは当然よ。これが香南ちゃんなら嫌がらせだろうけど、あなたは天然みたいだからね」
 さばさばと笑う沙月に、香南は獲物を前にリードを引かれた猛犬のような顔をする。と理央んが近づき、
「おっぱい大きい~」
 むぎゅ。掴んだ手はそのまま捻られてがたんと壁にぶつかった。
「痛いですぅ~。大きなおっぱい触っただけなのにぃ……ごめんなさい」
「強制わいせつで補導するわよ」
「その程度でわいせつは無理でしょ。せいぜい迷惑条例違反じゃないの?」
「いちいち細かい子ね、あなたは」
 香南はまたうーとうなるが、それだけだ。さすがだと阿妃佳は感心する。
「香南ちゃんより大きいよ」
 理央んは理央んで懲りる様子もない。
「あ、当たり前でしょ! あたしはまだ成長期なんだから。あたしだって、今はCカップだけど大きくなったらFカップくらいには……」
 トレーナーの胸をつまむ。
「大阪情勢に何かあったら緊急招集がかかるかもしれないから、よろしくね」



 目次 

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

小説へはこちらから
最新記事
最近の有無那
ボリウッド4のうち3つまでは見ました。あとは「きっとうまくいく」のみ。ついでにインド映画の御大アミダーブ・バッチャン、ハリウッド初出演の「華麗なるギャツビー」も見たいです…(7/9)
有象無象
連載メルマガ
現在連載中のメルマガはありません
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。