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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 6-2

「香南ちゃんごめんなさい!」
 病室で沙月がらしくない青い顔をして言った。
「警察は、八橋竜臥の身元確認を科学的な方法でやってなかったのよ!」
 

『香南。また警察』
 電話を受けた母は神経質に言った。
 迎えに来てすぐ沙月は警察手帳をさっと回して示した。丁寧に見せたら管轄外の神奈川県警の警官だとわかってしまうので、さりげなく、かつ素早く。上手いものだった。
 途中から合流した黒宗総監の車に同乗して、香南は阿妃佳の入院する病室に来た。
(真執の家のリムジンとかいう車と違い、公用車でも乗り心地は余り良くなかった)
 病室にはモニターのラーダも含め団員全員が揃っている。総監にでも少女探偵団の秘密を明かす訳にはいかないので沙月は、
「江礼真執と可愛い捜査協力者」
 と紹介した。真執が先頭なのはすごく! 気に入らないが、このオトコオンナをダシにするのが一番だとわからないほど、香南は馬鹿ではない。
 ー警視総監が少女探偵団次期団長を指名する訳でもないし。
 いや。ここのところずっと、それどころではない。
 小さなネズミのように香南は追い詰められてる。
 それは実際お前は小さな子どもでしかないクセに! と世界中から踏まれているようで、香南の憎悪をー掻き立てない。いつもとは違って。
(だって、どーせ、あたしは―)


 先日の自衛隊ミサイル攻撃での唯一の犠牲者。
 破壊された大坂城の石垣の直撃を受けて死亡した若い男は、ピースキーピングボランティア揃いのジャンパーを着ていた。
 都内の大学生ーかつキティーポニークラブでもボランティアをしていたー八橋竜臥だと思われた遺体を、大阪府警はボランティア仲間に確認させたが、損傷がひどく誰も首を縦に振ることが出来なかった。
「そこで府警も遺体から指紋を採ることまではしたんだけど……」
 直後両親が東京から着き、見るなり息子だと言って引き取ってさっさと帰ってしまった。
「向こうで部屋でも借りてれば府警も対照指紋が採れたんだけど。ボランティアは提供されたお寺の座敷で雑魚寝だったそうだから。荷物も親御さんが持って帰っちゃったしね」
 親が間違えるなんてことあるのか、と詰めた真執に、沙月はその時々と答えた。
 警察が判別出来なかった遺体の一部でも、子どもの足だ妻の腕だと指摘し、鑑定で正しいとわかることも多い。一方、親族が確かに自分の子や親だと主張した遺体が、後で違うとわかることも珍しいわけではない、と。
(……あたしが死体になったら、ママはわかってくれるかな?)
 わかんないかもね。ああでもママはあたしのこと嫌いだからかえってわかるかも―香南は思う。

 連続事件「二回目」の犯行声明は、キティーポニークラブのパソコンで作製されたと警察は解析した。
 八橋は事務ボランティアとして自由にそのパソコンを使うことが出来、聖蓮事件のショックを癒すため通っていた桜谷美弥とも顔見知り。彼女の住所や来訪する日時も把握可能だった。
 横浜の事件、聖蓮入試事件前日の貸し布団屋の作業時間、関西の外国関連施設連続襲撃、どの時間も八橋には明解なアリバイはない。
 香南たちは沈黙のまま沙月の説明を聞く。
 警視庁は八橋が生存していて連続事件に関わっている疑いで密かに捜査をしているという。
「……しばらく黙っていてくれないかの」
 という依頼が黒ちゃん、こと黒宗総監の今日の用件だった。
「あなたが言った通りね」
 沈黙を破ったのは、笑み含んだ阿妃佳が隣に立つ香南にささやいた声。
 そうだったかも、と気のない返事をしたのに驚いたようにこちらを見るが無視する。阿妃佳の眼鏡なしの顔をじっくり見るのは初めてだったが、やはり美人だ。不公平だと香南は思う。
「この事件は複雑での。外国やら政界やらが気にしているんで、逮捕まで内密に進めたいんじゃよ。きれいな新婚の奥さんを未亡人にしたいのかとか酷いことも言われ……っと!」
「黒ちゃん!」
 沙月がつかつかと詰め寄った。
「どーいうことよ! 脅迫があったの? なんでアタシにちゃんと教えてくれないの」
「いや、そしたら沙月ちゃん、心配してしまうし」
「あったり前でしょ! 言わなきゃ対策も立てられないでしょーが! このバカ黒っ!」
「沙月ちゃん……♡」
「バカ黒ぉ♡」
 大人二人は別世界に行ってしまった。未成年たちは肩をすくめるだけ。
「…大人になんてなりたくないものね」
 毒付きながら頭は働く。警視総監を脅せるのは、対抗する力がある(と思い込んでいる)存在。キティーポニークラブを訪問した「変な服装の男」―清大会、またはそっちの「政治」絡み系勢力だ。
 八橋のH点は余りかんばしくなく、大阪を非難することもなかったという。
 なら彼が連中の手下という可能性少ない。するとー
(…少しは真執にも役に立ってもらうか)
 何とか元気を振り絞って香南は言った。
「……ね、八橋さんは東京に住んでたんでしょ」
 実家は都内だが、八橋はアパートで一人暮らしをしていたそうだ。
「だったら大阪に行くまで住んでた部屋から指紋を採って、遺体の指紋資料と比べればすぐにはっきりするんじゃない?」
 黒宗夫妻は複雑な顔をした。
「遺体の指紋は大阪府警が保管しとる。今、府警と他の都道府県警は連絡がとれないんだよ、春瀬さん」
 中央から禁止されている、と総監は辛そうに言った。
「だったらわたし、大阪に指紋を届けに行きますっ!」
 バシッ!
 真っ直ぐに手を挙げて、元気よく理央んが言った。
 唖然と目を見開いたのは香南や黒宗夫妻だけではなかった。


「香南ちゃ~ん! この後ケーキ食べに行こうよ!」
 廊下は青だが階段は赤いタイル張り。スキップまがいの軽い足取りで理央んは言うことまで能天気だ。
「あんたね……。あたしは直ぐ帰んないと駄目なんだって」
 今は沙月が香南たちを送るタクシーを手配しに行っている。
「えー! 残念~!」
「ママがさ。年上の人とおつき合いすると危ないことに巻き込まれるから止めなさい、って! もーうるさいうるさい!」
 理央んはくすっと笑った。
「そんなことないよぉ? うちの団の中で一番香南ちゃんが危ないもん」
「よけーなお世話!」
「…ごめんなさい」
 瞬時にしょげる。
「あんたんとこのお母さんは、何か言わないの?」
「うん! いつも理央んの好きにしなさいって言ってる」
 そういえば、今回親に絞られた話を聞かないのは理央んだけだ。
 阿妃佳と真執も大変だったらしい。おまけに今も一階で待っているそれぞれの母親は、いい大人のクセに先程まで大乱闘で揉めていたーと阿妃佳も真執も頭を抱えていたーそうだし。
「いいお母さんだね」
 理央んはにこにこと返す。
「みんなにそう言われるから、そうなんだと思うよ♡」
「?」
 首を傾げた。
「まただわ。理央んちゃん、悪いけど香南ちゃんを先に送るから」
 寄ってきた沙月の携帯から母の声が漏れていて、香南の顔はこわばる。
 パチリ。親指で電話が切られた。
 ほっと息を吐いた香南と理央んに沙月は脅すように顔を近づけた。
「わかってる? 大阪へは陸上自衛隊の侵攻、地上戦の可能性もあるのよ!」 



 目次 

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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