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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 6-4

 小型ジェット機は間もなく、港湾機能を停止中の南港の空地に着陸した。
 艦船の砲が追うように角度を変えたのは見えたが、幸い砲撃はなかった。
 空地の一角に焦茶色の車一台を止めて、大阪府警の刑事が待っていた。
 明るめの茶色のスーツに、丸眼鏡にちょびヒゲがどこかレトロな印象の刑事は、細川《ほそかわ》と名乗った。 倉庫の建ち並ぶ向こうは海、そして艦影。
「えろうすいませんなあ、こんなに大勢でいらっしゃるとは知りませんでしたもんで」
 真執とボディーガード二人、理央ん、ラーダと香南の計六人。連絡が抜けましたんかなア、などのんびり言って、細川は明るく車に誘う。
「追加の車呼んでますんで。とりあえず江礼さん、例のものお持ちですかア」
「はい。そちらは照合用の指紋は持ってきてらっしゃいますか」
「いいえェ。後でいいどす。それよりどうです? 八橋の行方はわかりましたか」
「僕は警察の人間でもないのでわかりませんが。黒宗総監は、府警の方でこそ割り出せるんではないかと言っておられましたが」
「いやあ、そう簡単には行きませんで。ははは」
「あ!」
 びしゃっ!
 香南が手にしていたペットボトルのジュースを落として、道路にぶちまけた。
「ったく、ほとんど飲んでなかったのに~! 頭来るなー!。刑事さん、靴とかズボン濡れちゃった?」
 道路にしゃがみこむ。細川は軽くズボンを上げ、茶色いローファーとズボン裾をチェックした後、大丈夫だと香南に笑ってみせた。
「不注意だな。これだから子どもは」
 真執と香南の間に鋭い視線が交差した。
「崔さん。お願い」
 柔らかい声に崔は控え目な笑みで真執に近づくと、細川に突然手をかけ、
 ガチャリ!
 手錠をかけて後ろ手に拘束した。
「な、何するんですや~! 大財閥のお嬢さんか何か知りませんが、わたしは大阪府警の刑事ですよ」
「上手く作ったもんですね。顔はね」
 羽交い締めにされた「細川」に真執が硬質な冷たさを見せて言った。
「だいぶお金かけたんでしょう。でも大阪弁はちょっと不自然でしたね」
 男の顔がはっと歪む。
「それに、いくら隠してもあなたの『素晴らしい』センスは隠せませんよ。あなたが金で使ってるゴールデンヴィクトリーは外国人傭兵集団。日本の刑事のふりをする人材はいないでしょうからね。久しぶりです、筧雅比呂さん」
「な、何言ってるんだか……」
「イントネーションが標準語に戻ってるわよ!」
 香南が突っ込んだ。男は今度は青くなる。真執は追い討ちをかけた。
「色さえ合わせれば『普通』のふりができると思ったんでしょうけど。教えてあげますよ、筧さん。普通社会人はスーツにローファーを合わせたりしないんですよ」
「!」
「筧さんは僕が芝居の学校に通っていることも知ってるでしょう。当然、メイク落としは慣れてましてね」
 チューブを取りだすと、崔とセダニの二人ががりで押えさせて容赦なく顔をクレンジングする。眼鏡を外し、ヒゲを剥がすと―
「あーーーっ! あの格好イイ服来てる人の顔が出てきたーーっ!」
 理央んの叫びに真執は顔をしかめ、香南が顔を背け、一方筧は一瞬でも顔をほころばした。
「あなたが刑事でないことはすぐにわかりました。筧さん、指紋データなんてパソコンで送るもんです。今時、そんなもの手渡しに来るわけないでしょう」
「ま……」
「ちょっとミステリーでも読んでいればわかることですが。清大会や人間性向上運動に熱心なあなたは、そんなことで時間を潰したりはしていないでしょうからね」
 平静を装おうと、だが筧の顔はより複雑に歪む。それでも善人に見えることを真執は心底恐いと思った。だが阿妃佳不在の今回、自分が仕事を進めなくてはどうにもならない。構わず続けた。
「……八橋竜臥の行方をエサにすればきっと出てくると思ったんで。……この作戦自体を立てたのは僕じゃないですがね」
「は~い! あたし~!」
「と司令だろ!」
 きらきらきら。水面の凪が光り、人気のない倉庫街の木々がはひそやかに枝を揺らす。
 遠く自衛隊の艦船がなければ、なんて平穏な風景かと思っただろう。
「僕が疑問に思ったのは、なぜ僕たちが阿妃佳の家にいる時襲われたのか、ということでした」
 真執には常にボディーガードが着き、尾行の有無もチェックしている。ラーダが監視プログラムを組んでいたがあの日はGPSのハッキングもなかった。
「どうしてもわからない。阿妃佳に相談したらこいつと話すよう言われて」
 顎で香南を指す。香南が負けじとこちらを睨んでから横の理央んを指した。
「この子じゃないかと思ったんだって!」
「わたし~~!?」
「そうだ。君だけがメールを暗号化していなかったと香南ちゃんに言われて、あっと思った」
「GPSのハッキングにはかなりの腕の人を使っていました。それだけのエキスパートならメールの盗み見くらい簡単です」
 今度はラーダ。
「たまたま事件の後黒宗夫婦と話す機会があったのを利用して、僕がその特使として大阪に赴く、というストーリーをデッチあげた。で、それをメールで理央んに送ったんです。口だけでなく実際にやってもみた。まさかこの時期『芝居』で大阪に来るとは思わないだろうからね」
 この「芝居」は理央ん以外の皆が知っていたのだ。
「……成金が!」
「心外だな。江礼資源開発は僕で三代目、あなたも政治家三代目。同じでしょう?」
 筧は奇妙な非対称で目まぐるしく表情を変えたが、目だけはまだ優しい。
「……わたしが何をしたというんです?」
 言葉が絞り落ちる。
「あんたがやりたかったことは、連続殺人の真犯人が八橋竜臥だってのを隠すこと。そうじゃないと、大阪人はこんなにひどいって焚きつけられないからね!」
 香南が人さし指を突きつける。今は無礼だと突っ込む気もなかった。
「……大阪人は本当にひどいじゃないか」
 堰をきって流れ出した。
「お嬢さんもそう思わないか? 彼らはいい人間になろうとしないんだよ! 人間誰だって、優しい思いやりのある人たちの間で、お互い気にかけ合いながら楽しく暮らしたいじゃないか。だけど、大阪人たちだけが……あいつらこそわたしたちの社会をメチャクチャに破壊する諸悪の根源だ!」
「それが阿妃佳をあんな目に合わせた言い訳になるかっ!!」
 香南たちが驚いたように真執を見た。それほど声に憎悪がこもったことに自分でも気付いていた。
「阿妃佳が何をしたって言うんだ! あいつは優しい子だ。思いやりだってある。それだけじゃなくて責任感も、実行力も統率力もある。なのにあいつは今もベットで寝てるんだ! あと少しズレてたら、死んでたかもしれなかったんだっ!!」
「それが心優しい人間がすることですか?」
 真執には黙っていた筧は、ラーダの問いに微笑みを浮かべた。



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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