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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 6-6

 ……
「気付いてなかったみたいですよ」
 顔も身も凍り付かせた筧の姿、ラーダにささやかれるまでもない。
「考えてなかった。それ」
(見事な「いい子ちゃん」か……)
 氷の表情からはやっと善人らしさが消え、真執は一方どこかほっとする。
「筧さん。あなたは正しい人間になりたかったんですね。あなたの正しい人とはどういう人のことですか」
 ラーダは尋問の時も丁寧さを失わない。
「だから……人のために尽して……自分の欲望や野心より、他の人の利益を考えて、社会に奉仕する……」
 目が泳いで言葉が消える。
「父さん……」
 日本語が上手くないので通じなかったかもしれませんがー前置き後もう一度尋ねた。
「ですから、あなた自身はどんな人間になりたいんですか」
「だから、人のために奉仕するんだって言っただろう! わかる? 難しい?」
 ナヒーン《NO》とつぶやいてから。
「あなたがどなたかに奉仕して、その人がまだ誰かに奉仕して、ではその人たちはどんな人たちになったらいいのでしょう? あなたは政治の人ですから、理念がありますのでしょう?」
「…………」
「なるほど」
「そりゃ穴のあいた風船か」
 真執と香南の言葉が重なり、互い微妙に顔を背ける。
 すくりと立つラーダの背で黒髪が豊かになびく。相変わらず通る声はだがダイヤの針のように硬質だ。
「筧さん。あなた自身の中身が空っぽでしたら、あなたの奉仕も空っぽに対してということになります」
 ただ冥い川がだけが流れている。それを見ることすら筧は避けていたのか。
 緩慢に、繰り返し彼は首を横に振る。
(奉仕、出来たらいいよね)
 そんな生き方自体は真執は否定しない。自分の運命とは違う道だけれど。


 清大会は大阪戦争のきっかけを探し、聖蓮女学院の事件での「おかちめんこソース」の使用を知った。これはと思った直後、関西の外国関連施設が同一犯に襲われた。利用しない手はなかった。
「……襲撃された施設についてネットで調べた痕跡を探し、協力的な警察関係者に頼んで、IPアドレスから名前を割り出してもらった」
「アドレスまではわたしも見つけましたけど、その先は無理でした」
 ラーダがぽつんと言う。
「キティーポニークラブのパソコンで、名義は岩室ドクター。初めはドクターが犯人かと勘違いしたが、調べてすぐ真相がわかった」
 筧たちは八橋を監視した。自首や逮捕されそうになったら抑えるために。
「ところが、そのキティーポニークラブに江礼資源開発の実質的トップのあなたが来た」
 清大会の仲間が多く出るパーティーにコンパニオンとして潜入していたこともわかった。
「江礼資源開発はこの戦争に非協力的で、懸念事項の一つだ」
(そうか?)
 中立ぐらいしか出来ない自分たちの、何を過大評価しているのか。苦く笑う。
「八橋には大阪に逃げられた。けど」
 直後彼は自分を「死亡」させ、筧らは安心した。これで真相も抹殺された。凶悪なものは全て大阪人の犯罪、だ。
 ところが、
「江礼さんたちは、明灰とかいうセラピストの娘の家で黒宗沙月と接触した。どういう訳かは知らないが、あなたがたは事件の犯人探しに首を突っ込み始めていた。何を警察に吹き込んだかわからない。処置は仕方がない」
「……そんなことで、僕たちを殺そうとしたのか」
「あなたはいつもプロに守られている。対抗するにはこちらもプロを使うしかない。江礼さん、あなたが反撃しなければ警告で済んだんです」
「僕がいたから、友人たちが、酷い目に遭ったというのか……」
 血の気が引く。背に深く刺さったナイフ、病室の阿妃佳の頬、あんなに青くー


「真執。何このせーかく劇悪おやじの戯れ言にえーきょーされてんのよ!」
「おやじ……」
(あ)
 珍しく香南のセリフはわざとではなかった。
「……こいつはね、ただ誰かを憎んで殺したい、それもちょっとコネと金があるから、自分の手は汚さないってだけのタダの犯罪者なんだって! あたしみたいな普通の子たちだけで事件を追ってたら、ふつーのチンピラに殺されてただけでしょ?!」
 言いながら香南は震えた。あの時の恐怖が身に焼き付いて離れない。
「違う! いいかい? わたしたちは、君みたいな女の子たちが楽しく暮らせる世の中のために頑張ってるんだよ」
 不格好によろけつつも立ち上がり、筧は意外にも優しく返した。
(あたしのこと、殺そうとしたくせに)
「じゃ、楽しいってどういうの? 教えて!」
「って……。君が学校の友だちと遊んだり、家族みんなでおいしいものを食べながらお話したりすることだよ」
「そんなの全然楽しくない! 学校は馬鹿な連中がつまんないことばっか話しているし、ママとパパは怒るばっかだし!」
 一瞬目を点にしたがすぐに毅然と、だが変わらず柔らかく筧は言った。
「それじゃあ、もっと勉強しなさい」
 唇が笑みのカーブを作る。
「勉強すれば、大人になった時に皆のために何ができるか、わかるようになるものだよ」
「勉強、したい…………!」
 不意に奔流が吹き上がった。
「勉強したいよ。あたし、もっともっといろんなことを知りたい。どうしてあたしはずっと我慢してなきゃならないの。なんでこんな世の中なの。どこの偉い人が決めてるの?」
 そんなことより、もっと。
「宇宙の果てはどうなってるの? 世界は本当は何から出来てるの。素粒子の一番大元は何なの。戦争はいつからあったの? お金ってどうやって世界を動いていくの? あたしもっともっと勉強したいよ! だけど駄目。あたしはH点が最低だから……」
(馬鹿じゃないの。あたし、他の小学生みたいにガキじゃないって!)
 筧は腰をかがめた。
「だったらH点を上げる勉強をしようよ。頑張ればきっと、君がやりたい勉強にふさわしいH点が取れるようになるよ」
「やったってーーー!!」
 二倍の声で怒鳴り返す。
「座禅もお祈りも気功もヨガも念仏も題目も交流分析もセルフコーチングもアドラー心理学もポジシンも! 無上甚深微妙法《むじょうじんじんみみょうほう》百千永劫難遭遇《ひゃくせんまんごうなんそうぐう》、天にいますわれらの父よ御名があがめられますように御国がきますように」



 目次 

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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