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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 6-8

「見てください」
 指したのは道路脇の土の上。石で書いたらしい大きな文字。

『さがさないでください。香南』

「こ、こんな……常識的な文句残すな~っっ!」
 香南らしくもない。
「真執さんっっ!」


 十数分、三人とボディーガードで探しても見つからない。
 ボディーガードたちは速やかな移動を促す。ノートパソコンを操るラーダの瞳に詰め寄られ真執は視線を落す。
(だから僕はトップになんか向かないんだ!)
 携帯を取り出した。阿妃佳は病室でPHSを使う許可を得ている筈だ。
「司令!」


 延々と高層団地が立ち並ぶ横、海すぐそばの公園の水飲み場を背に、香南は座り込んでいた。
 筧と対決した場所からは歩いて十五分ほどかかる場所だ。
「香南! 何勝手なことしてるんだ!」
「GPSか」
 立ち上ると平淡な声で言った。おそらくラーダが自分の携帯をGPSから割り出したのだろう。
「真執。あたし帰らない。このまま大阪に残る」
「いい加減にしろっ! 沙月さんや黒宗総監にも迷惑をかけるー」
 と途中で言葉を止める。自分が人の迷惑など気にしないことを思い出したのだろう。
「あたしだって現実は知ってるの」
 いつものようには切り返さなかった。
「いくら少女探偵団で成果を上げたって、どーせあたしはH点最低の劣等生」
 団長になるどころか、
「ろくな学校にも会社にも行けない」
 お嫁さんにもなれないかもしれない。何年も我慢して大人になったって、H点劣等生のまま。世の中弱肉強食、弱ければ踏まれるだけ。わかっていたけど、未来があるようなふりをしてた。
「大阪だけが、あたしの人生の夢だった」
 ごく小さな光は、だがもう絶たれた。
「さっき筧さんが、暗峠は突破されたって言ってた。わからないの? 生駒山の奈良と大阪の府県境よ。日本書紀に書いてあるでしょーが。自衛隊はもう進攻し始めてるのよ」
「わかってたらさっさと言ってくれ!」
 日本書紀なんて覚えてないよと真執は頭を掻き乱す。かわいそうな馬鹿。
 かわいそうなお利口さん、あたし。
「航空管制が有効なうちに空港に戻らないとーわがまま言ってる場合じゃないだろう!」
「わがままなんか言ってない。あたしもう、帰らない」
 道は閉ざされた。大阪は戦争に負けて「日本」と同じ人間性立国になってしまう。
「止めろ。いくら君が頭が良くたって、一人じゃ生きていけないんだぞ。小学生じゃどこも雇ってくれないし、部屋だって貸してもらえない。まさかさと美に迷惑かける気じゃないだろうな?! あいつにだってお父さんお母さんがいるんだし、戦時下なら食料も不足する。君の面倒なんて見られないぞ!!」
「そんなことわかってるって、この馬鹿! さと美に迷惑かける気なんかない。あたしは生きていけない」
 傭兵連中の襲撃から逃れた時、初めて生きていてよかったと思った。いつもの光景が、テレビで見る外国映画の街のように鮮やかだった。風の冷たさも、ガードレールに反射する覚束ない光まで全てがとても大切なものに思えた。
 死にたくなんかない!
 港に着いた時からずっと海がきれいだ。コンクリートのテトラポットがきれいだ。団地の壁の黄色がきれいだ。
 それでもっ!
「死んでもいいから…………大阪から帰りたくないっ!」
 爆発。
 涙が頬を流れ出した。馬鹿な自分。小学生にもなって。今度は六年生になるのに。
「子どもでも、大人になっても。人間性至上主義だから。あたしなんか生きてけない」
 筧と同じ。ほんとは皆、性格の悪い奴は死んで欲しいって思っている。
 ママもパパもいつも言っている。誰も彼も皆思っている。
 あたしは、もう駄目、だ。
「香南ちゃん、止めてください!」
 ラーダが悲鳴を上げたが、涙でよく見えない。
 ボディガードたちが真執を窺うが何か首を横に振る。携帯を取り出して少し話すと、こちらに手渡してきた。
「司令だ」
 予想通り。真執はいつも自分で最後まで考えないで司令に任せる。それが「友情」とかいうものならそんなものいらない。
 携帯を引ったくると耳につける。言いたいことをまず先に捲し立てた。
 自分はもう帰らない、大阪に残る。
 ー泣きじゃくりながら。
『戻りなさい。命令です。いえ、戻って来て』
 いつか近づいた時の精油の香りのように阿妃佳の声が和らいだ。
 ーあなたには、未来があるから。


 その間に、八橋竜臥は逮捕されていた。

 
 勤務していた豚まんの地下工場ー一応法律違反なのでーに府警刑事が突入した。
 禁制品になったおかげで、警視庁に押収された包装紙から死んだはずの八橋の指紋が出たのだから悪法、いや馬鹿法にも功名とでも言うべきだろうか。ただし違法ゆえ包装にメーカー名がなく、警視庁では工場の特定が出来なかったが、府警にかかればたちまち判明したのはさすがである。
 筧は八橋を必死で探していた。彼が真犯人だと判明してはならない。いかなる手を使っててでもと傭兵たちに命じたようだが、戦闘のプロであっても刑事ではない外国人では上手くはいかなかったようだ。
 警察は張られていたので、真執たちの来府に気を反らせ筧たちに現場を離れさせた隙に、府警が八橋を逮捕したのである。


「……どうする?」
 真執と阿妃佳、双方から八橋の逮捕を知らされる。
「取りあえず……見届ける。だってわかったから。動機」
 大阪に残るかどうかは、その後。



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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