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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 6-9

「これで横浜からバイク飛ばしてきたかいがあったってものよ」
 大型護送車の中、黒宗沙月が言った。
「そっちは沙月さんの趣味でしょうが。誰も『バイクで』大阪へとは言わなかったでしょう」
 真執が冷静につぶやく。
「あなたも可愛くないわね。香南ちゃんに似てきたんじゃないの?」
「んん!」
 不本意だ、という顔で真執が口をつぐむ。
「府警からも護送警護についてくれるんだけど、今はどちらにしろ動けないから、少し時間もらった。いろいろ聞いて見たいことあるでしょ?」
 傍らには沙月の愛車のドゥカティが鎮座している。バイクと反対側の座席に、おそらくは手錠に繋がれた―だが第三者の香南たちの前のためタオルで上から隠された―八橋が、同じくさりげなく伸びる腰繩付で座っていた。
「アタシは少し休むわよ」
 腰繩の端を持ったまま沙月が後ろの座席に下る。
「……何なんだ君たちは」
 疲れ切った様子の八橋が少女探偵団員たちを見上げる。
「女の子には謎を解きたい年頃があるんだよ。で? 結局動機は何だったんだ?」
 女の子? と真執に向かい首を傾げたのは全員が無視した。
「……復讐だ」
 傍らの座席ではっと理央んが肩を縮める。
「卵の声だ……」
「何への復讐だ? アンドレアの女の子と聖蓮の受験生、領事館、どこに共通点があるんだ」
「そんな小さな目的でボクがプロジェクトをやってきたと思うのかい?」
 線の細い感じの顔立ち。目も細く眉も薄い。
「人間性至上主義社会への復讐でしょ」
 ぽつんと言った香南の目はまだ赤い。
「週刊誌とかに載ってた。あんた、H点が悪くて附属から大学にエスカレーターで上がれなかったんだって? 浪人したってH点が悪けりゃたかが知れてる。ま、学科の成績もあんまりよくなかったみたいだけど。頭ワルイんじゃましてどーしよーもないって!」
 真執が気がかりそうに香南たちの様子をうかがう。
「大変だよ~。理央んだって受験しろって言われたらどこにも受かんないと思うもん」
 小さくうなずきかけて、だが八橋は無言のままだ。
「最後の事件は『死後』に事件を起こして容疑から逃れるためのカモフラージュ。これは性質が違う。でもそれまでの事件は殺人が目的じゃない」
「……あんたはアンドレアの中学生二人を拉致して、ひどいリンチを加えた。その間にあんたはこの二人がとても仲がいいことに気がついた。だから最後の仕上げに、琴咲ユカリに『お姉さま』を殺させたのよ。おそらく手を取って無理矢理ナイフを握らせて突き刺したんでしょう。確か弱い力の刺し傷があったはず」
 真執が顔を背ける。理央んは目を見開いて硬直し、ラーダがそっと近寄ってその肩を抱く。ほんのりと異国の香が匂った。ラーダの服に染みているのだろう。
「『いたずら』をしなかったのは、証拠が残って自分が逮捕される可能性が高くなるからかな? ほんとにイヤな奴! だけどこの事件じゃ、トラウマ持ちにさせることができたのはたった一人。こんなんじゃ割に合わないとでも思ったんでしょうね。聖蓮の事件では爆発物を使った」
 爆発物には被害を増大させる仕掛けをしたが、致死性を増す細工はあえてしなかった。犯行の回りに渦巻いていた深い憎悪の正体はー
「死ぬ人間は確実に出なくてはならない。そうじゃないとショックが深くならないから。だけどあんたが出したかったのは、事件の惨状を見てしまった多数の目撃者。なぜかって言うとー」
 八橋は唇を震わせている。
「H点が劇落するから」
 現に受験生の親からクレームが来ていると報道されていたではないか。
「聖蓮はH点レベルがとっても高いお嬢様学校。そこを受けるようなせーかくのイイ子たちが、ひどいショックを受けてトラウマ持ちになって、H点エリートから脱落することが狙いだったんだ。違う?」
「いい加減にしろ~~~~!」
 八橋が怒鳴りー迫力はあまりないー沙月がはっと顔を出す。
「いいかい君たち?! ボクは犯人なんだよ。ミステリーじゃたいてい捕まるまでは犯人はボロクソ言われるけど、犯人はお前だ! と指を指されて捕まった後は暗い舞台に一筋のスポットライトが当たるように今や主役、真犯人のオンステージ!」
 うっとりと両手を合わせるーついでにがちゃがちゃ手錠が音を立てる。
「人生の喜怒哀楽の一部始終を聞いて『お前も辛かったんだな。だけどコロシだけはやっちゃいけねえよ』と涙ながらに同情するのが探偵側の役目だろーが! なんでそっちが言っちゃうんだよー!」
「わかってんなら全部自分でやれ!」
 香南の冷たい答え。
「お前のせいで阿妃佳は……スポットが当たる主役俳優にはお前は全然足りないんだよ!!
 真執が罵る。
「じゃあ、じゃあ言ってみろ! どうしてボクが領事館を回ったかわかるか?」
「っ!」
 香南は言葉に詰まった。真執も口を引き結んだまま。
「……もっとまとめて傷付いた人を生みだすため。つまり、戦争を起こすためではないんですか」
 ラーダの静かな言葉に、香南たちだけでなく八橋もぽっかりと口を開けた。
 絵に描いたかのようにがくんと八橋の力が抜ける。
「一生懸命考えたんだよ? 日本を攻撃させるためにはどの国を怒らせればいいか? 中国とアメリカを一緒に狙ったのは、ただ中国を焚きつけただけでは、在日米軍含めアメリカが日本に味方してしまうかもしれないし、中国はアメリカと正面から戦争をする気まではないだろ? だけどこの二カ国両方が日本に敵対されたとしたら、タッグを組んでやり返すんではないか、って。前の大戦の時みたいにね。だけどそうなると韓国はどうだろう、北朝鮮は巻き込んでおいた方が得か? ついでに今度はパキスタンやインドの動きまで考えなければならなくなって……」
「つーまーりー。考え過ぎて何が何だかわからなくなったってこと?」
「そう……ってその通りなんだけど、口出さないでくれよ! 主役はボクなんだからさ」
「領事館にソースをぶちまけるくらいで戦争になると思ったのかよ」
「思わないよ! そこまで馬鹿にされるとボクだって怒るよ! ホントはきちんと火炎瓶を投げ入れて犠牲者を出すつもりだったんだけど、どこもみんな警戒が強くて逃げてくるのがやっとだったんだよ」
「当たり前でしょーがっ!」
 詰めが甘い。こいつは詰めが甘過ぎる!
「犯行声明に誤字のチェックもなし? 恥ずかしいわね」
「言っとくけどボクの犯行声明は一回だけだからな! 最初のはあれは誰か便乗犯のいたずらだ!」
「一枚目には誤字はなかったの! つまり一枚目はお利口さんが書いたけど、二枚目、つまりあんたの書いたのだけが間抜け!」
 イーダ、と香南が口を広げる。



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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