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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 6-10

「……しょうがないじゃないか。あの時は忙しかったんだ」
 領事館への攻撃は、どういうわけかー彼にしてみればー大阪への警戒心を強めるのに利用されてしまった。
「不本意だ。不本意極まりないよ。だってボクは大阪の味方なんだ! 大阪だけが一度もH点を採用してないんだ」
 そうだが大阪人もこいつにだけは言われたくはないだろう。
「ボクは日本とどっかが戦争をして、日本が負けて一億総トラウマになればいいと思っただけだ。大阪が戦争で攻撃されることなんて望んでなかった。そんなの反対だよ!」
「だけどお前の『プロジェクト』とやらは全部、大阪人の仕業とされて逆に火を煽る結果になったよな」
「そんなのボクにもわかんないよ」
 あんたみたいな頭ワルイ奴にわかるわけないじゃんー腕組みのまま香南が言い捨てる。
「外国が駄目なら大阪だ。ボクは大阪にかけた。大阪が日本にテロを仕掛けてくれれば、トラウマ持ちが増えて万万歳じゃないか。で、大阪原理主義者にカンパしてたんだけど、人っ子一人死にゃしない。あんなのにバイト代ほとんどはたいたかと思うと、もう悔しくて悔しくて……」
「『原理主義者』の名前が『あほかいな』ってとこで気付けよ」
 いつ捜査の手が伸びるか気が気ではなかった。実際誰かに監視されているような気もした。だから次の犯行のために「声明」を用意してから、ボランティアを口実に大阪へ逃げた。
「あれは本当に偶然だったんだ」


 その朝はミサイル攻撃の予告ビラが空から降っていた。
 これから何人の人が死んで、何人が深刻なショックを受けるのだろう、と思うとわくわくした。わくわくすることは正しいとポジティブシンキングの連中が言っていた。なら皮肉なことに自分は正しい!!
 皆が苦しむなら、自分はもう死んでもいい。
 ボランティア本部が置かれた建物前に、新規ボランティアを受け付けるテントがあった。八橋はその早朝、一人で受付を担当していた。
『おはようございます。よろしくお願いします』
 岐阜だか愛知だかから来たという、いかにも善良そうな顔の学生の受付をする。
 名前を受付簿に書かせると、簡単にボランティアの仕組みを説明する。揃いのボランティアジャンパーとコートも欲しがったので販売した。
 新規のボランティアは府庁にも名前を報告することになっている。担当者がいれば顔合わせも出来るからと誘った。ルール通りのいつもの仕事だった。
 よほどうれしかったのか、彼は途中の公衆便所内で買ったばかりのボランティアトレーナーとジャンパーに着替えた。法学部の学生だと言っていた。サークルはスキーサークル、引越屋のバイトに登録して稼いでいる。同じサークルの後輩が好きなんだけど、なかなか誘えないとも言っていた。会話の内容は今も手に取るように思い出せるが、どうしても彼の名前だけが思い出せない。そんな自己紹介のようなことを話しながら、人気のない大阪城公園を歩いていた。
 突然、空間そのものを切り裂くような大音響がした。頭を抱えて地面に伏せるのがやっとだった。何かがそばで崩壊したのがわかった。
 しばらくたって。
 やっと体を起した時、すぐそばまで城の石垣が倒れかかっていた。
『八橋さん、これって……』
 彼はぶるぶる震えながら石垣を指さした。予告されたミサイルが目標を誤ったのだと気付いた。
 大音響の後の音のない世界。
 同じ黄色のトレーナーの彼と自分。背は同じくらい。髪もごく軽いブラウン。
 いかにもH点の高そうな、ボランティアが本気で大好きそうな彼。

「アイデアが浮かんだのはほんの一瞬だった。悪魔がささやくとはあのことだよ」

 何気ないふりでポケットの軍手をはめ、崩れたガレキから大きめの物を拾ってがつん! と彼の頭に叩き付けた。
 振り向く間もなく彼は倒れ臥した。仰向けにするといくつもガレキを拾い、驚いたままの顔を潰しまくった。
 終わると手に男のリュックを抱えて本部まで走った。テントが無人のままなのを見て、初めて八橋は思いつきが成功するかもしれないと思った。
 そっと受付簿の最新ページを破る。これで奴の名前は消えた。
 聞き覚えのあるボランティア仲間の声が建物から聞こえてくる。慌てて身を隠した。建物の裏手を通って逃げ、奴と同じ公衆便所でボランティアジャンパーとトレーナーを脱ぐ。震える手で死者のリュックをあさり適当にその服を着た。「現場」へ戻り、人が近づく気配に焦りながら、奴の尻ポケットから覗いていた身分証を自分のパスケースと入れ替えた。
 何もかもが運に恵まれた。八橋は素早く現場を離れ、大阪の街に紛れた。
(ボクはまだ生きられるかもしれない)
 死んでもいいやとつい数十分前まで思っていたなんて嘘のようだ。
 すぐに思いついた。ニセ犯行声明を出した誰かへの復讐をかねて、誰か一人殺してこよう。自分は死んだ。その後も連続殺人が続いたら完全に容疑者ではなくなる。
 思い浮かんだのはキティーポニークラブの「被害者」たちだった。


「トラウマは……素敵だよ」
「!」
 ラーダが理央んの肩を抱き直す。真執が拳を握る。
 八橋の顔は割れるように表情が変わっていた。夢見る目と、遠慮がちな仮面の下から現れた邪悪な頬と。線の細さだけが変わらない。
 香南だけは表情も変えず真っ直ぐに八橋を見返していた。
 彼は、歪んだ笹の葉のようにヤケ笑いをした。
「大学に入ってすぐ、H点至上主義の世の中に復讐してやろうと決めた」
 エスカレーター進学に失敗した時ということだろう。
「H点エリートの連中に一生消えないような傷を残す。体にも、心にも。今までボクたちを見下してきたあいつらを、真っ逆さまに転落させてやる。闇のド真ん中に」
 アハハハハ……とてつもなく暗い目で彼は声を立てた。
「琴咲ユカリちゃんは一生楽しい気持ちになんかなれない。視力や指をなんで失ったか思い出す度に苦しむんだ……大好きな先輩の、とどめを刺したことをね!」

『ヤダー! ヤダーーーーーッッ! アアアアアッッッッッッ』

「言葉にならない声で呻きながら、あの子は先輩を殺してったよ。ボクに手を押さえられてさ」

 左胸から抜いたナイフの刃をユカリの頬に当て、鮮血を拭う。
『ほーら、死んじゃったよ。君のせいだね。悪い子には罰を与えないと』
『ツッッッッッ!』
 切り落とした指を、その場で粉々に刻み続けるー


 ラーダは伏せ、真執は小さく顔を背ける。
 理央んは意味がわからないのか目を丸くするだけ。香南の表情が一番動かない。



 目次 

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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