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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 6-13

「そのうち先生から、お前はもう独立するようにと追い出されました。先生は絶対ですから仕方ありません」
「……ヨガの先生って日本でのイメージとは違います。禅の師、という方が近いかと思います」
 ラーダがつけ加える。
「ありがとう、お嬢さん。……さて、指導者ともなれば、来てくださる方にわかりやすく神の科学のお話をしなければなりません。ところが私は、どうしてもそれが上手くいきませんでした」
 他のヨガの師たちが例え話を上手く使い、笑わせて人々を導いていたのに対し、
「私は笑わせることが出来なかったんです」
 悩みに悩んで、ついには道場を閉めた。
「ジョークならユダヤ人、と聞きましたのでまずはイスラエルに行ってみました。ですが求めるものは得られません。そこで出会った日本人に落語の存在を聞いて、来日してみたんです。落語の修業は日本語が出来ないと駄目だと言われまして、勉強していた時に、テレビで漫才を見ました。衝撃でした」
 ほわんと天を仰ぐ。
「神が求めたものを与えてくださったと確信しました」
(…あんたの神様ってあんなのをくれるの?)
 いつか大モニターで見たどーしよーもない彼らの漫才を思い出す。
 バーティヤーは大阪の演芸プロダクションに押しかけた。たまたま株取引の関係で来社していたリチャードと出会い、社長の指名で「世界征服」が誕生した。
「昔の自分がどれほど高慢だったか、やっとわかってきたように思います。あの頃は笑わせよう、笑わせようと必死でした。今でも苦労はしていますが、何よりもただ、お客様が大口を開けて笑ってくださる顔を見ているだけで幸せなんです。…相方にも恵まれましたしね」
「知らんわ」
 リチャードが大きなアクションで顔を背ける。
(ってこれもまるで漫才なんだけど)
 続けられる限り漫才師をして、駄目になったら国で道場でも開こう。思っていたところだった。
「大統領、電話してきはったんやって?」
「ええ。こちらにもインド人は多くいますから、なんとか助けてもらえませんかと頼みました。首相に話を通してみるとおっしゃっていましたが」
「早速インド大使館が、日本政府と連絡してるようやで」
「いい結果になるといいのですが」
 合掌した足元に、ラーダが進み出てさらりと額づいた。
 バーティヤーはヒンディー語ーおそらくーで二言三言優しく言葉を与える。
 広々とした自家用ジェットの座席でワイングラス(ただし水入り)を掲げ、
「えらい相方を持ったもんやなあ」
 とリチャードがこぼしたのを香南は聞いたー



「お帰りなさい」
 阿妃佳はいつも以上に白い肌で、いつもと同じように静かに微笑んだ。
 香南は一人、ベットの前に立つ。

 大阪への電話で阿妃佳は言った。
『真執も知らないことだけどー私は、人を殺してるのよ』


 幼稚園年少組の時だった。阿妃佳は親友の磨実と河原で遊んでいた。
 草っぱらを駆け回り、互いに追いかける。阿妃佳が鬼の番になって、磨実は川岸側へ追い詰められた。阿妃佳は、磨実が横へ逃げるだろうと思った。右手にはコンクリートの階段がある。川岸の土手は滑りやすく、足を出したら最後、川まで真っ逆さまだと阿妃佳は知っていた。
 だが磨実は、知らなかった。
「磨実ちゃんは私ほど頭が良くはなかった。私があなたほど頭が良くないのと同じだわね」
「!」
 磨実はためらいもせずに後ろへ下がった。

『磨実ちゃんっ』

 手を伸ばした時のことを、阿妃佳は忘れない。
 磨実は呆然とした顔で、手を伸べることも忘れたまま下に転げ落ちて、
 どぼーん。
 水音を立て、三度頭を川面から出してから沈んだ。

 遺体が出たのは翌日だった。


「私はだいぶ疑われたみたい。遠くから私たちの追っかけっこを見ていた証人がいてね。頭の良い子、と言われてたのも悪かったんだとか」
 子どもだったのでよくは知らないが、親は磨実の親に訴えられ大金を払ったらしい。
「北海道から東京に逃げて、父は仕事を変わって、母は癒しの世界にのめり込んだ。小学校を卒業するくらいまで、年に一回くらい警察の人が私の様子を見に来てた。今でもお父さんは私が恐いみたい。同じ家にいるけど、絶対に二人っきりにならないのよ。おかしいでしょう?」
 ふふ……
 それでも阿妃佳は微笑む。香南は憎まれ口を叩くのも忘れて必死で足を踏ん張った。
 辛いのは、自分じゃなくて阿妃佳だから、泣いたりしない。
 もっと大きくて少年院行きだったら、大人で刑務所に入ってきちんと罪を償えたなら、まだよかったのかもしれないー構わず阿妃佳は淡々と続ける。
「殺意があったなら、まだましだったのかもしれない、って何度も思って。そのうち自分でもわからなくなった。本当に私は無実なのか。自分を誤魔化してるだけじゃないかって。疑って、疑って……少女探偵団の団員になって、最後は団長をやって。私は少し思えた気がする」
 壁に目をやりながら。
「私にも、悪くない事が出来るのかもしれないって」
 ぽん、と小さな花が開くように笑いかける。
「私は駄目なの。何をやっても過去はついて回る。でも香南は自由」
 夢見るような口調が阿妃佳らしくない。
「どこまででも、どんな事にでも挑戦できる」
 世界には人間性至上主義でない国もたくさんある。ラーダのネパールやインドも含め、香南はどこででも活躍出来る。
「だから私、香南に焼きもちを妬いてた。ごめんなさい」
 眼鏡の奥で目を細める。頭は下げず、真っ直ぐにこちらを見たままで。
 寂しげで、整った顔立ち。
(何よ、美人のくせに)
 女の子は、十八になって目尻に皺が出来る頃に「女の人」になる。阿妃佳ももう大人の顔だ。
 可愛いだけの香南や理央んには、そうなったら売りはなくなる。ただのおばさんだ。
 H点も低いし、
(理央んはまたアホだし)
 どうにもならない。 
 阿妃佳は違う。はたちになったら若い美人。三十になったら、地味だけどマスコミが「理想の上司」と言うような女優さん風の美人になる。
(ずるいよ)
 言葉が詰まって何も言えない。
「私は、もう回りの人が死ぬのを見たくなかった。香南でも、理央んでもラーダでも真執でも、もし死んでしまったら立ち直れなかったでしょうね」
 団員のことは全て自分の責任だし、とさらりと言う。
「エゴイストでしょ? あなたに戻って来て欲しかったのは、あなたのためじゃない。私の精神の安全のため」
 首をぶんぶんと横に振る。その方がもっと胸が痛い。
 ー止めてよ。
「それでも」
 腕をやんわりと動かしー香南は抱き寄せられる。
「戻って来てくれて、ううん。生きててくれてありがとう」
 滲み通る優しい赤紫の香り。阿妃佳お気に入りの精油。確かゼラニウム。
 こっちもありががとう、なんて絶対言ってやんない!!



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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