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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! エピローグ

 都心のオアシスと言われる広い公園に香南たちは居た。ゆるやかな起伏を描く芝生のあちらこちらにカップルが座り、走り回る幼い子どもたちの笑い声が聞こえる。
 ざわめく木立の前に四人は座っていた。
 理央んはどぶ赤色の制服の上にコートを羽織り、ラーダは深い緑色に金糸の刺繍入りのパンジャビードレス―アオザイをだぶっとさせ丈を短くした類の上着にズボン、首元の長いショールの三点セット―が彫りの深い美貌に似合っている。香南も一張羅のブレザースーツを着たかったのだが、親が仕舞い込んでしまって見つけられなかったので、つまらない紺のプリーツスカートに白いブラウスなのが気に入らない。
 真執だけがいつも通り、ブラックジーンズに青と黄のシャツを重ねたカジュアルな格好だ。
 木立側からやって来た人物を見て香南はぽかんと口を開けた。
 確かに阿妃佳のはずだが、黒いパンツスーツはいいとしても、白手袋に黒いサングラス、には言葉が出ない。
「何のつもりだ?」
「たまには『司令』らしい格好をしようかと思って」
 真執は素早く立ち上がると阿妃佳のサングラスをはぎとった。 
「どうして君は、そういうどうしようもないボケをするんだ!」
 阿妃佳は心なししゅんと首を落とす。
 眼鏡を掛け直し、扇型に座った四人の正面に阿妃佳が腰を下ろした時、香南は小さく息を飲み込んだ。
「本日をもって、明灰阿妃佳は少女探偵団を卒業します」
 気負いのない声だった。
「ありがとう」
 四人を見渡す。
 途端に香南は嗚咽が押えられなくなった。だけど何故こうなる?
 もう六年生になるのに泣くなんて恥ずかしい。と隣でつられたように理央んがべそをかき出した。
 いや、明らかにつられている。
「真似すんじゃねーよ!」
「ん? 真似ぇ?」
 罵ったおかげで少し落ち着いた。
 顔を上げると阿妃佳はそんな自分たちを穏やかな笑顔で見つめている。
 芝生の上に注ぐのは春の日ざし、には早いが明るく、風に混じる生暖かさの方はもう春のものだ。
「同時に少女探偵団日本支部団長も辞任します」
 香南はごくりと唾を飲んだ。真執も瞬時に体を固くする。
 次の団長を指名する儀式は、自分がシンボルとするものを後任に渡すことで完了する。
(あたし。絶対あたし!)
 この人を継ぐのはあたしに決まってる。
 阿妃佳は先ほど外した白手袋を揃えるとこちらに向け、一人に向って差し出したー

                  ※

 同じ日。都内某小学校の体育館。
 卒業生が一人一人名前を呼ばれ、壇に上がって卒業証書を受け取って行く。
「左藤ナナ子さん」
「はい」
 大人の声が返事をした。
 喪服の女が遺影を胸に壇に上がり、卒業証書に手を伸ばす。会場に広がったのは今までとは違うすすり泣き。
 式が終わり、卒業生たちは風の強いグラウンドに誘導された。女が二、三人の記者をあしらって校舎脇に来た時、今日一番の強い風が吹いた。
「痛たたたっ」
 顔を覆う。
 コンタクトに砂が入ったらしくかなり痛い。それで涙があふれているのだが、記者たちに見つかったらまた好き放題に書かれてしまう。無理に頬を拭って顔を上げた時、気付いた。

 これまでにたくさんの風が吹いた。
 娘を失った時に体中を駆け巡って全ての関節をがたがたに揺さぶった風。
 マスコミの、知人の、聖蓮女学院の職員の言葉に突き刺され、自分を焼いた怒りの突風。
 犯人の大学生にとって殺害するのは誰でも良かったのだと知った時、支えを崩して地の底まで吹き落ちていった竜巻。
 インドを仲立ちに日本政府と大阪府は正式に休戦した。
 大阪は府民が日本式のH点を選んで受けることを妨げないこととなり、政府は府内での宣伝に必死だ。
 だけどあんな連中矯正出来っこない。
 「大阪春の陣」は未遂に終わったが犠牲者は出た。ミサイル攻撃での火災に巻き込まれた者が二名(うち一名は消防士の殉職)。コンピューターの誤作動で手術が失敗した者二名、工場で急に機械が止まったため死亡した者一名。
 後者三名遺族の賠償請求に対し、府と府警、日本政府は共に責任を押し付け合い、大阪弁での罵り合いがニュースで流れるたびに女は耳を塞ぎたくなったーいや、上から耳たぶを押し潰した。
(H点の悪い奴なんか最初から刑務所に入れておけばいいのよ!)
 連中が何と言おうと、人権団体がどう主張しようと、娘は死んだ。
 触れることも声を聞くことも出来ず流れるのは風だけ。 
 
 ここはあの子が地を踏み、跳び進んだ最後の場所。
 今グラウンドの砂を舞い上げ思うがままに暴れる春の風は、かもしかのように疾走するナナ子そのものだ。
 ああ。
 ここにいる。母親は思った。



  <完>


 目次




【参考資料など】

<参考文献>
・なるほど知図帳大阪 昭文社 2006
・たこやき大全 お作法編 ぷろじぇくとMSG
・たこやき大全 座学編  ぷろじぇくとMSG
  ※たこ焼きMSG http://punichu.chu.jp/hts/blognplus/

<ほか>
・大阪歴史博物館
・とんぼりリバークルーズ  なにわコミュニティツーリズム
  ※道頓堀20分間のクルーズです。
   ガイドの方の説明が大変役に立ちました。ありがとうございます。

道頓堀クルーズ画像


<謝辞> 

友人G(大阪ネイティブ)  翻訳及び現地事情指導を担当していただき、ありがとうございました。
 (最終的には物語の効果上、作者が手を加えています)

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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