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空など飛べないと刑事は言った 2-2

 現場とも自分の住む場所とも離れた京都を中継地に選んだのは、老若男女誰が一人で居ても目立たない大観光地だからだ。ビジネスホテルにチェックイン後、フロントで尋ね、宿から二分のネットカフェへ飛び込む。
 リクライニングチェアのある個室でフランボアは唸った。
「ない……なんで!」
 いくらニュースを検索しても、自分が済ませた「事件」が出てこない。
(まさか死んでなかったんじゃ)
 証拠は残さなかった筈。だけどもし、あの子が生きていたら、顔を見られた自分は終わりだ。
 いつの間に指先が小さく震えている。耳元でドクドクとうるさいほど血が脈打つ。
 それでもフランボアはやっとメールを書き終えた。タイトルは、
 「試食おいしかったです」
 死体の顔を見た今では、吐き気がするほど悪趣味な暗号。だが「試食」という言葉を提案したのはフランボアだ。メーリングリストに「三月うさぎの試食会」というふざけた名前を付けたのもー
 

「きのうの試食はおいしかった。と思います。
 ニュースを検索しても見つからないんです。でも、確かめたのでおいしかったはずです。
 シュミットさん。ほかの誰かでも、見たら教えてください   フランボア」


 事件が検索にかからなかったのは、フランボアが選んだ地名=リゾートとして知られる駅と犯行現場とでは、市町村が違ったからだ。駅のすぐ北からは隣村となっている。フランボアがそれに気付くのはホテルでニュースを見てからだ。
 その前に。
 簡単に作業が終わると思い込み、持ってきておいた女性誌が二冊。
 リクライニングに勢いをつけて寄り掛かり、半ばヤケでぱらぱらとそれらを眺める。元アナウンサーのカラーコーディネーターが、愛されるコミュニケーションとしてのファッションを語り、元フライトアテンダントの経営コンサルタントが、生き方としての起業を主張する。
(留学か。いいなあ)
 ーあたしだって、こんな風に……は大げさでも、頑張ったらもしかして留学とか、と夢見たこともあったのに。
 あいつさえ居なければ。
 だから、今日やったことは当然なのだ!



 三時間後。
 控え目な明かりの部屋、ノートパソコンの前で百太は眉をひそめていた。
 ニュース検索の一つも出来ないフランボアに腹が立ち、これだから女はと吐き捨てる。
 だが問題はもっと大馬鹿ながぶがぶだ。(百太が見るに、こちらはおそらく男である)

 百太は日本の警察を甘く見てはいない。
 彼らの捜査は「縁」と「鑑」の二本立てだ。
 「縁」は人間関係。容疑者や被害者のあらゆる関係を彼らは調べ尽す。
 「鑑」は物。世界トップレベルの科学技術で見えない証拠すら選り出して、彼らは犯人を追い詰める。
 逆に言えば「全く縁のない人間」が「物証を残さな」ければ、完全犯罪は可能なのだ。
 物証は実は多少残しても構わない。毛髪等が検出されても、日本列島一億の中から自分を特定出来なければ、科学捜査も無力だ。
 わたしたちは、捕まらないー
 そのためのシステムが「三月うさぎの試食会」だった。

 ところがメンバーの一人の「がぶがぶ」が、無い縁をわざわざ自分で作り、トラブルを起こしてしまった。
 こんな輩は切り捨てたいが、「三月うさぎの試食会」は一蓮托生だ。誰か一人警察の手に落ちたら、「縁」が探り出され全員捕まってしまう。自分がフォローするしかない。
 読んだメールを次々と削除しながら、百太はここまでの過程に思いを駆せた。
 目的を決めたら、有効な手段を選んで実行、結果を獲得。それを繰り返して、人生は成功し続けるのみー

 手始めに、がぶがぶに近づいた連中の背後を調べ、出来るなら利用しよう。
 どうしてもという時には……自分だけ、逃げる手筈は整えてある。



 三日後。
 ML《メーリングリスト》〈三月うさぎの試食会〉
 十八時十分
「フランボアです。東京のゴキブリがうちに来ました!!
 ターゲットのことを聞いていきました。
 どうしよう。誰かいいアイデアありませんか?
 助けてください!」

 十八時五十八分
「フランボアさん、ゴキブリとの話の内容を教えてください。   月音」

 二十一時三十五分
「ゴキブリなんてまだいいだろうが! こっちはヤクザだぞ!
 どうしたらいいのかこっちこそ知りたいよ! バカヤロー!   がぶがぶ」

 二十一時五十分
「フランボアより。がぶがぶさん、何言ってるんですか?! プロはともかくー
 ゴキブリはあたしたちを捕まえることが出来るんですよ!!!!!! 」

 二十二時二十八分
「ふざけんなよ。ゴキブリはおれたちを殺しゃしない。
 でもヤクザは何するかわかんねえんだよ! いい加減なこと言うんじゃねえっ!」

 二十二時四十五分
「フランボアです。プロが何をするかわからないのは確かにそうですけど、彼らの関心を引き付けるようなことをしたのはそっちでしょう。自業自得じゃないんですか? むしろ迷惑です。
 もっともあたしたちは、誰一人明るみに出てはならない試食会のメンバーですから、出来る限り力にはなります。
 その意味でも危ないのはあたしの方です。ゴキブリは捕まえたら最後、『飛翔』にすることだってできるんですよ。あたしたち皆を、です!
 百太さん、シュミットさん、月音さん。読んだらアドバイスくれませんか?
 お願い! もっと真面目に考えてください!」



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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