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空など飛べないと刑事は言った 2-3

 二十三時一分
「フランボアさん、がぶがぶさん、落ち着いてください。
 ゴキブリはぼくたちを殺せません。
 現在の裁判では一人試食したくらいでは飛翔にはならないそうです。
 でも、ぼくたちは誰一人捕まってはいけない仲間、というのはその通りですよね。
 フランボアさん。夕方のメールでも書きましたが、詳しい話の内容を教えてください。
 今後のこと、皆で考えましょう。   月音」

 二十三時五分
「こんばんは。月音さんのおっしゃることに同感です。
 フランボアさん、もっと詳細な話を書いてください。
 わたしが思うに、ゴキブリは少しでも関係がある人間全てから話を聞きますから、フランボアさんの所に行ったのも、単にその一環でしょう。
 確か前、百太さんも同じようなことを言っていたと思いますよ。
 例の試食の後始末でいろいろ忙しいので、今晩はこれで失礼します。
 シュミット」

 二十三時四十分
「あーうぜえ! MLってすごい見にくいんだけど。
 前みたいに板に戻した方がよくねえ?
 百太さん、またお願い出来ませんかねー
 おやすみZZZ……   がぶがぶ」

 二十三時五十七分
「フランボアです。失礼しました。ゴキブリとの詳しい話の内容は、次のメールでアップします。
 がぶがぶさん。百太さんは掲示板だとセキュリティ上問題があるから、ってMLに移したんでしょう? 今、こんな時に危ない方に戻すなんて馬鹿げています!
 シュミットさん、月音さん、ありがとうございます。
 百太さんはまだお仕事なんでしょうか?
 これを読んだら、なるだけ早くお返事をください。  
 P.S. ゴキブリって何度も書くと気持ち悪い」

 〇時十二分
「ゴキブリを『害虫』と変えたらどうかと思うのですが。皆さんどうですか?
 月音」
 

 やれやれ。
 ノートパソコンを前に百太は舌打ちした。
 日中本来の仕事で忙しいのに、ますます疲れが溜まる。
 東京、つまり警視庁管内で「三月うさぎの試食会」が実行した事件は二つ。そのうちフランボアと縁があるのは第二の幼女殺人の方だ。シュミットが書いたように、刑事はその「縁」の捜査で、フランボアに話を聞きに来ただけだろう。
 連中はいつも通りお決まりのパターンで捜査を進めている。百太が創り上げたプロジェクトには、それでは歯が立たない。
 だからこれはむしろ成功の証拠だ。
(フランボアが、不用意に挙動不審な受け答えなどしていなければいい……)
 それ以上に、「プロ」をヤクザとそのまま書いてしまうがぶがぶも、愚かさの極みだ。
 「殺人」は「試食」に、「死刑」は「飛翔」に、「警察」をー月音提案ならー「害虫」と変えている。
 インターネットのメールは、郵便ほどには秘密を保持出来ない。少し技術がある人間になら、簡単に盗み見ることが出来るからだ。このルートでの犯行の露見を防ぐために、暗号とも言えない言い換えを提案してあるにも関わらず、この様だ。
 かぶがぶの奴は無い縁を作り、職業犯罪集団の関心まで引いてしまった。
 第一の犯行で月音が殺害したのは大企業重役の妻だ。闇社会との間にトラブルを抱える社で、夫は少し前まで彼らとの交渉役だった。マスコミは暴力団の報復かとむやみに騒いでいる。ありがたいことだ。ヤクザ絡みとなれば、警察も勝手に背後を深読みして、自滅するだろう。都合が良いことこの上ない。
 少しのハプニングは想定の内。的確なタイミングで軌道修正さえ行えば、プロジェクト自体が、安全に目的を達成出来る頑丈な骨組として、自動的に機能してくれるので心配はない。
 とはいえ情報収集は必要、と百太は判断した。
「誰を動かせるかー」
 危険な行動は人にやらせるのが基本。薄い笑みを浮かべ、百太はキーに手をすべらせー
(待て)

 がぶがぶが、あの重役の妻を被害者を選んだのは、本当に偶然なのだろうか。
 メーリングリストの前身であった掲示板を管理していたのは、百太だ。その際に得たIPアドレスから、百太は出来る範囲でメンバーの素性をチェックしていた。
 IPアドレスからは個人を特定出来ない、と広く宣伝されている。詐欺等の犯罪対策のそれを鵜呑みに安心している間抜けも多いようだが、現実には「直接」は特定出来ないというだけだ。(勿論警察なら、手続を踏んで全ての情報の開示を命令出来る。だから警戒が必要なのだ)
 がぶがぶのアクセスの多くは大手予備校のサーバーからで、深夜のみ全国型プロバイダーの都内ポイントを通していた。後者は自宅、予備校は生徒とスタッフ両方の可能性があるが、生徒だと百太は見当を付けていた。
 書き込む時間帯に加え、内容や言葉の幼稚さ。本人も学生らしいことを漏らしているので、まず間違いない。
 ーだが、半分ヤクザの学生や、元々ヤクザ一家に生まれた少年もまたいくらでもいる。
 がぶがぶがその類で、頭の足りない演技の裏で闇社会の為にこのプロジェクトを利用している、ことはないのか?
(…まあいい)
 どちらにしても、そう大きな問題ではない。
 ヤクザでも警察でも使えるものは全て使う。
 私は、勝ち続ける。

             ※

 翌日午前。ML〈三月うさぎの試食会〉より抜粋

「そんなの百太さんがやればいいじゃないかよ!」
「私は仕事が詰まっていてね。常識的な時間には無理なんですよ」

            ※

 パソコンの電源を落としてから、月音は思った。
 ここのところ「三月うさぎの試食会」は盛況だった。がぶがぶとフランボアは熱くなっていて、シュミットからは不機嫌さが、百太にさえも少しいらついたところが見えた。怒り、ののしり……きっとメールを打ちながら血をたぎらせていたに違いない。そう、皆「わくわく」していたのだ!
「いいなあ……楽しそうで」



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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