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空など飛べないと刑事は言った 3-6

 ML「三月うさぎの試食会」

「フランボアです。害虫からまたアリバイを確認されてしまいました。
 がぶがぶさんの試食があった時のと、月音さんの時のと両方です!
 地元の害虫ですが、東京から問い合わせがあったそうです。
 もう何か知られてるみたい。どうしたらいいんだろう。
 あたし害虫になんて捕まりたくない。
 こんな筈じゃなかった。
 皆さん助けてください! どうしよう。どうしよう」

「フランボアさん、アリバイはOKなんですよね。    月音」

「こちらもヤバイ。激ヤバだよ。
 害虫に尾行されてたみたいだ!!!!
 名前からすると墓場の、フランボアに絡んだのと同じおやじ害虫。
 きのう《・・・》の朝、試食とは全く関係ない店でモーニングを食ってたら、例のプロフェッショナル系の新聞記者に捕まった。ヴィクティムとの関係を突っ込まれた。
 それも大問題なんだけど、いつの間に後ろで頓田って害虫が話を聞いてて、口を出してきた。
 プロ系の記者は逃げた。けど害虫はこれから毎日、学校への行き帰りを見張るっておふくろに言いやがった。
 シュミットさん、百太さん月音さん、尾行されたら次は捕まるんじゃなかったけか?
 フランボアの話からしても、害虫はもうおれたちを包囲してるんじゃないかって……
 済まねえ。いい考えが浮かばない。
 プロも害虫も恐い。   がぶがぶ」

「フランボアです。
 アリバイはもちろんあります。
 お母さんと一緒に近くの店に行ってました。本当。
 月音さんの時は家にいたから、家族みんなが証人だし。
 だから調べられても大丈夫ですが……」

                 ※

「頓田様のお好みはわかりませんでしたので。お口に合わないものがあったらおっしゃってください。代わりは色々あります」
 妹亜宅のダイニング。大きめのテーブルで妹亜の隣に樹馬、頓田はその正面に座った。
 棒棒鶏ののった冷製中華麺、氷水に浮かせたトマトのサラダ、ナスの煮物等、食べるほどに頬が緩む。
「いや。どれもおいしいよ。だけど大変じゃないか、毎日の料理って」
 これだけの腕前、かなり日々家事に時間をかけていると頓田は推測した。
「家に居る頃から家事は結構やってましたから。それにジェントルマンたるもの、レディに奉仕するのは人生の務めです」
「……」
(何で男が女に奉仕しなくてはならないんだ……あ)
 姫君の手を取って、ひざまずくのは王子。
 それは現実に侵入することのない、殺すことも逮捕されることもない、美しい夢。
「……ご両親は他界されたそうだが、他にご親戚とかは居ないのか?」
「俺は元々捨て子でしてね」
 それぞれのコップに水を注ぎながらリュンは静かに答える。
「生みの親もわからねえ施設育ちで、三歳にならないうちに鳳羽の『両親』に引き取られたんです。とても可愛がってもらいましたが、居なくなってからは、血の繋がらねえ俺に興味を持つ物好きは出ませんでしたね」
「……済まない」
「いえ。お心使い感謝します」
 妹亜が請け合った通り、少年メイドの作った料理は美味だった。
 樹馬はがっついて何度もお代わりをリクエストする。対称的に妹亜はゆっくりと箸を動かす。彼女の甘い物を平らげる速度と食事のそれは違うらしい、と頓田はぼんやり考えた。


 ソファーに移ると、ルイボスとローズ何とかという真っ赤な飲物を押し付けられた。
 見た目は不気味だがよく冷えていて酸味が喉に心地よい。
「それでめいど、月曜から夏期講習に行く気ない?」
「例の所ですかね」
 一人ダイニングの椅子に腰かけたままリュンが返した。
「そ! マッシーも入るから」
「マッシー様も受講するんですかい」
「まさかまさか! 年はなんとかごまかせるかもしれないけど、頭がついてかないよ。受験勉強なんてもう忘れちゃったし。ありおりはべりいますがり~、って何だったっけ? あ、頓田さん! 何で理系なのに古文やってるのかって思ってます? 実は僕、大学は文系だったんですよ」
「ほお」
 そんなこと気にも留めなかったが。
「昔から機械いじりが好きだったんですけど、専攻しようとかは思わなかったんですよね。ほら、将来プラモデル作りで食っていこうとか思わないような感じで」
 大学時代、樹馬は警察が募集したネットパトロールのボランティアに参加した。
「コンピューターをこんな風に役立てることが出来るんだ、って感激して。僕単純ですから将来の仕事はコレだ! って思い込んだんですけど……」
 単細胞の自覚はあるらしい。
「……専門の学部の人しか志願出来ないって言われて、さすがの僕も大ショックで、一時は飯も食えない、というのは嘘でご飯三杯が一杯、にはならなかったけど漬物が入らないほど落ち込みました」
(どういう例えだ、それは)
 散々考えた末、卒業後専門学校でコンピューターを専攻し直して警察技官に応募、見事採用となったという。
「親にはだいぶ迷惑も心配もかけちゃって。専門の時の学費、まだ返してる最中なんですよ~」
「迷惑ではないんじゃないか。むしろ喜んでらっしゃると思うぞ、君が好きな仕事に就けて」
 だといいなあ、と樹馬は素直に礼を言った。
 そう。若い人間はこれでいい。自分はそんな連中を見守ることを楽しむ側だ。
 なのに未だに空を飛びたいーのかもしれない。
 凡人にも関わらず、普通ではなくなったらどうしたらいい? もし、もしもの話だがー最近繰り返し頓田を襲う恐怖。
「……リュン君。君は将来の夢は何かあるのかい?」
「ありません」
 斬るような返答。
 憮然とした耳に、悪いけど続けていい? と妹亜の言葉が割って入った。
「……どーしてもリュン君が隣で勉強したいって言うなら別だけど、マッシーには捜査として予備校に入ってもらうつもりよ」
「良かったです。マッシー様が隣じゃ、落ち着いて勉強なんぞできません」
 ひどい~と騒ぎ立てる樹馬を横目に、頓田は尋ねた。
「喜屋武警視、何の話です?」
 これは仕事の話だとようやく気付いた。



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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