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空など飛べないと刑事は言った 5-4

 ML「三月うさぎの試食会」

「百太さん、そんなの理由にならねえよ!
 あんたが今回の試食でやったことはルール違反だ。
 お前なんかやっぱシュミットの野郎と同じじゃんか!!!   がぶがぶ(怒)」
 
 スタンドの明かりだけが点いたベットサイド。フランボアはベットにもぐって目を凝らした。暗くすると、あの女の子の首が出て来そうで寝られない。
 フランボアも百太はずるいと思う。
 ターゲットとヴィクティムとを分け、目的の相手「ターゲット」には殺人の容疑を押し付けて社会的に「殺す」。実際に手を下す相手「ヴィクティム」は他のメンバーが選んだ自分とは何一つ縁のない相手。すると警察は絶対に自分たちを見つけられない。
 皆で練った計画に百太は従わなかった。月音が試食したエリート役人(汚職の疑いあり)は当初自殺に見えるように殺す計画だったらしい。ヴィクティムの抵抗のため他殺と断定されてしまい、それなのに人身御供の容疑者《ターゲット》が出ないー
(警察は「縁」と「鑑」で動くって力説してたのって、百太さんじゃなかった?)
 メールソフトを閉じようとして気が付いた。

「【怪盗カルビからの忠告状】(葛理様)」
 
 ふざけたタイトルのメールだが、名前入りなので一応確認する。

「お前が何をやったか知っているぞ。犯罪者め。
 かわいそうな女子中学生。
 わたしはお前がやったことをネットに流すことも、アルバイト先の店に電話で告げることもできる。
 お前たちの言う「害虫」に密告することも可能だ。怪盗カルビは全能なのだから。
 破滅したくなければわたしに従え。
 お前はこのことについて一切仲間と相談してはならない。
 「三月うさぎの試食会」にメールをするのをしばらく控えたまえ。
 お前がわたしの指示に従順であることを観察した後に、次の指令を与える。
 ごきげんよう。   怪盗カルビは正義の味方」

 震えた手からマウスが滑り落ちた。息が詰まり、視界もよく利かない。
(知ってる!!)
 フランボアが真犯人であることを、誰かが。

『はゆらさんによき導きをお与えください…』

 祈った牧師の静かな横顔。これがその導きとやらならば、
 ー神様! ひど過ぎます!
 
                  ※

 その日の夜半。

 夜の海、というと妙にロマンチックに響くが、闇一色で何も見えない。海など無いのと同じだ。世の中の思い込みなどその程度ー海辺の国道を歩きながら百太は思った。
 道沿いに有名なフレンチレストランがある。ここが真留留組関係者の経営であることも、少しもののわかった人間には知られている。今から百太は、この店のガラスに石を打ち込む。使用するのは原始的な木のパチンコだ。
 さすがに銃撃には見えないだろうが、要は真留留組が攻撃を受けたと思わせればそれでいい。ヤクザも警察も勝手に騒いでくれるだろう。その結果、暴力団同士の血で血を争う抗争が始まったとしても知ったことか。
 月音には、ネットと口コミの二形態で「墓場」を攻撃するようにと指示した。一方百太は先日、ヤクザに怯える密告者に扮して匿名で、とあるジャーナリストにメールを入れた。若い女性エリートが口を出してきておかしくなった、と告げるとエリート嫌いの彼はいたく発奮したようだ。
 正義派を操ることなど簡単だ。
 さて、そろそろこのプロジェクトは潮時だ。今回の目的、錦矢の殺害は完了した。
 月音によると彼はかなり抵抗したという。自殺に見せかけることは難しいかもしれないと詫びが入り、実際警察は他殺と断定したが、別に気にはしない。
 無益な抵抗などいかにも錦矢らしい。
 奴に悪い感情は全くない。かつて自分と関わったのを恨めとでも言うだけだ。
 もっとも錦矢は人を恨むより、真剣な目で責め立ててくるのだろうがーはっきりとは思い出せなくなった面影に微笑む。
 だがそれも過去の話。自分の未来には、いくつもの大事なプロジェクトが待っている。「三月うさぎの試食会」などもういらない。
 先日メーリングリストで、パソコンの中をクリアにするように指示した。だががぶがぶは、家族と共用のパソコンだから勝手にいじれない、とほざいてきた。
 警察がヤクザが、とすぐ震え上がるくせに、セキュリティコントロール一つやろうともしない。救いようのない馬鹿だ。立場もわきまえず下手な口コミを強行したフランボアも、全くの同類。
 このままでは「三月うさぎの試食会」は警察に挙げられる。フランボアも、当人がどう考えていようとシュミットも、可哀想だが月音も逮捕されるだろう。それでも自分まではたどれないだろうが、安全側を取るにこしたことはない。

 百太は目的のためには手段を選ばない。
 今までのところ犯罪に踏み込むより、脱法すれすれのグレーゾーンで立ち回る方がリスクが低かったので、辛うじて法律を守ってきたに過ぎない。
 人に殺させることはたやすかった。良心も何も痛まない。
 では、自らの手で人を殺すことは出来るだろうか。出来るだろう。
 月音へのお礼殺人は控えているが、まずはその前に必要なことをやろう。
(がぶがぶの口を、封じる!)
 パン、パーン!
 投げた石を確認しようともせず、百太は歩き出した。頬を心地よい風が吹く。それが潮風であることに気付くこともなかった。
 車を走らせながら今後の予定を考える。明日も、いや今晩こそやるべきことはたくさんある。片っ端から片づけて、新しいリストの実行に追われる。その繰り返し。
(明日はテレビか。夜更かしはほどほどに……出来る作業は朝に回そう)



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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