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空など飛べないと刑事は言った 8-5

 捜査相談室での最終日に聞いた、主にメールの解析から判明したという犯罪の全貌はこうなっていた。

  事件 加害者 依頼者  標的《ターゲット》=社会的抹殺対象 
  犠牲者《ヴィクティム》=実際の被害者 

一、専務夫人事件(東京)月音 がぶがぶ 中丸(がぶがぶの元同級生) 専務夫人
二、あすみちゃん事件(東京)がぶがぶ フランボア 土蜘蛛
 (フランボアのストーカーの原因を作った警備員) あすみちゃん
三、女子中学生事件(長野) フランボア シュミット シュミットの身内 
  女子中学生
四、流通産業省官僚事件(東京) 月音 百太 不明 錦矢昇吾
 (をぐら笑果の元恋人)
五、をぐら笑果事件(愛知) 百太 月音 不明 をぐら笑果

 あすみちゃん事件を含めたこれらは、本当に連続交換殺人だった。早くに指摘したリュンへの驚きや、疑ったことへの申し訳なさなど様々な思いが交差する。
 犯行そのものは五人で交換殺人を行い、しかも憎悪の対象は殺さず濡れ衣を着せ、社会的に抹殺することで復讐する、というひどいものだった。
 だが後半の事件はこの構図から外れてくる。未だ事件の全貌は明らかではない。そしてその原因の一つは、「百太」の正体が依然掴めていないところにある。
 五人を同時に押えないと意味がない。特にグループの頭脳だったらしい百太を残してではー
「百太を押えることは出来ません。もう死亡しています」
 樹馬は平然と言った。
「正体が割れたのか!!」
「はい。えーと、どう説明したらわかりやすいか自信がないんですが、他のメンバーと交換したメールを作成した痕跡が、そいつのパソコンに残っていたんです。ものすごく意外な人物ですよ。割り出したのは僕と先輩でして、さっき係長と一緒に山浦さんのとこに報告に行ったら、頭抱えてましたもん! 実は『百太』は……」
「しゃべるな!」
 即座に怒鳴った。
「君も警察の一員なんだから、許可された情報以外はやたらにしゃべるんじゃない! さっきXデーのことで口をすべらせて、またはないだろう?」
「いやあ、どーせ明日にはみんなに公表するんだし、頓田さんは大事な取り調べ要員だから……」
 それでもとにかく絶対これ以上しゃべるな! ときつく説教を食らわせてから、礼は言って去ろうとする。
「あの、これから僕アンさんのとこに報告に行くんですけど、一緒にどうですか?」
(会いたくない)
 断って樹馬に背を向ける。しばらく歩いてから、彼が妹亜に何もかも吐きまくるのではと思いついてーその可能性が限りなく百パーセントに近いことに、頓田はがくりと首を垂らした。

                   ※

 遠い山際に一時間に一本の電車が走っていく。
 郵便局員に手渡された速達を開いたまま、シュミットは厳しい顔でしばらく動かなかった。白い封に押された消印は都内のものー庭先に隠れた刑事が双眼鏡で確認した。

                   ※

 初めて買ったファッション雑誌は、大判で滑らかな紙にカラーページだらけ。豪華そのものなのが百太にふさわしい、と月音は思う。

「あきらめずに努力し続ける女こそ、恋も仕事も勝利する!」

(そーだね、そーだね)
 うっとりとグラビアを見る。
 百太の載った雑誌をまとめて書店に注文した。引き取って帰る時店員が噂していたのが聞こえた。何で女性雑誌なんて買うんだろう? ファッションの勉強してるようには見えないけどー雑音は気にもならない。部屋に篭って雑誌の山に手を付ける。
 百太の記事をまとめて読んでいると「わくわく」してどこかへ「進みたく」なる。
 前にマンションで殺されかけた時の「わくわく」とは全然違う。気持ちが明るくなり、大きくなる感じ。これがきっと本物だ!
 直に百太の話を聞けたならー思った時、屋上で血を拭き出して倒れた姿を思い出した。首を横に振ってそのイメージを追い出す。
 何冊か読んだところで、インタビューを音声で聞ける雑誌に当たった。
 早速パソコンを立ち上げると、メールが届いていた。【警告状(芳岩様)】というタイトルのメールを読む。

「残念だな。お前たちはもう終わりだ。明日の早朝『三月うさぎの試食会』メンバーの所に一斉捜査が入る。警察に連れていかれたらそこでおしまいだ。ざまあみろ!!!!    怪盗カルビは正義の味方」

 百太は何と言っていた? 私たちは誰一人逮捕されてはならない、のではなかったか?
 いつの間にか夜、あたりは静かだ。月音はナップザックに荷物を詰め始めた。



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