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ピンクのイルカが夢を見た
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ピンクのイルカが夢を見た 3-4
ンマニ島には、白い女神がいつか少女の姿で島を訪れるという伝説がある。その時全ての敵は神々に討ち滅ぼされ、島は天国になるという。
工場関係者が色の白い言葉の通じない小柄な少女を連れてきた。女神が来た、島は豊かになる、と賛成派が騒ぎ始め、その日から島はいっそうの混乱に陥った。
『その子亡くなったのよね。伏せておいた方がいいと思う』
『……遅いです。僕、宴会の時にトトパルさんに言っちゃいました』
言葉を失いシモーヌは目を落とした。今後こちらからはそのことはしゃべらないように、
『トトパルじゃ、どの程度わかってるか……だしね』
あきらめたようにきっぱり言った。
慶はすさまじく大きな後悔に打ち震えていた。もしあの時、二人に同行していたらこの目で「工場」とやらを確かめられた。何がまつみに関係しているかわからない以上、至る所に目配りしておくべきだった。男は黙って、いつも腹を据えて冷静に行動するべきものなのにー
(こいつにまた先を越されて……)
「工場」について話す有人に吹き出した憎悪をぶつけないようにするのが精一杯だった。
(明日から、お前の近くに。まつみ)
とても寝つけないと立輪は思った。裸電球一つの小屋でのシモーヌのと話の間、彼は何度もシャツのポケットに手をやった。普段スーツの内ポケットに入っている警察手帳があればー正式な捜査だったなら、通訳をシモーヌが断ることもなかったかもしれない。
(大変なことになっちゃったな……)
彼女の話は重要な証言に思えた。それが事実だったら、今まで線上には出ていなかった外国人への捜査をやらなければならないのかもしれない。松法みな美という無垢な少女がなぜこんな遠い島の人間たちの欲の渦に巻き込まれる羽目になったのか。それは彼女が殺害されたことに関係があるのか。しかし自分はー
立輪は混乱した。
物心ついた時から立輪はまっとうなことが好きだった。ファッションとして斜に構える、くらいは理解出来るが、特に少年時代、仲間の間でワルの方が評価されることが納得出来なかった。
警察は完全無欠の職場なんかではないけれど、犯罪者に対峙する刑事という仕事は大好きだ。
だが今、どうすることがまっとうな仕事を貫くことになるのか。立輪はジレンマの中にいた。
まつみが工場関係者に連れて来られたという話を聞いた時、有人はざっと青くなった。白人ビジネスマンたちと一緒にそこを見学させてもらうという話もあったのに、自分はただ笑って小屋を見ていただけだった。
噛み付くような勢いで尋ねる慶に有人はろくに答えることが出来なかった。
『船の中で英語で聞こえた話からすれば……あそこは「工場」兼「研究所」で、海洋資源の開発をしてる。小さくても世界最先端の技術を扱ってるとか、環境問題に関係あるとか聞くけど実態はよくわからない。近い内に一回り大きい「工場」に改築して、実践に取り組む、とも言ってたぜ』
超高給説に加え、生き血を吸われるという噂もあるそうだ。
(時間は限られてる。明日からどうやってったら、一番まつみに近づけるのか?)
横の二人を起こさないように静かに枕元のバッグを探り携帯プレーヤーを耳にする。やがてお気に入りの曲、「Saviour Machine」が耳の中の世界を支配した。歪むような音が実は決して単調でも規則的でもない波の音を消して、有人をやっとまどろみの世界に落としてくれた。
間もなく、明け方だ。
※
ジス・イズ・プラニ。ジス・イズ・ゴッデス。木陰の草地でトトパルはそう繰り返した。 三人は汗をぬぐうのも忘れてその石像を見た。顔も彫られていない、頭と腹だけの角張った白いひとがた。トトパルが言うにこれが「プラニ」という名の女神像らしい。
ホワイト。セイムスモール。ゴッデス。ケム。
トトパルがボディランゲージ交じりで説明するには、この像はまつみと同じ背の高さらしい。
慶が一歩石像に近づく。鼻先で息が苦しくなって有人は小さく目を反らした。まつみのひとがたに近づく様が生々しくてー
(こんな風に、近寄ってー)
やわらかい体。きっと。
「春の検診で百四十七・二でした。僕との差を考えると……これくらいかもしれませんね。えーと、水族館の手すりに寄りかかった時……」
水平にした手のひらを上下に動かす。
「測ろうか」
立輪が金属メジャーを出してさっと伸ばす。
「百四十八、弱だね」
トトパルは石像の額あたりの傷をさかんに指した。セイム、ということは、まつみにもこの傷があったということか。慶の顔が石像のざらついた灰色の平面に寄せられる。
(キスしてたら、わかるよな。顔近づけるから。……あ、駄目か)
何度も「あのひと」とキスをしたけれど、近付いた顔なんてろくに見た記憶がない。すぐに目を閉じてしまってー
像の肩に置いた手で体を支え、慶は目をさまよわせた。
「僕は気がつかなかった。ってことは、そんな大きな傷はなかったってことだと思う。あいつも何も言ったことない。派手にはしないけど、結構見た目は気にする子だったけれど」
そっぽを向き風になびく木々に目をやる。
「Has she come here last May?」
「エクスキューズ、ミー?」
シー、ゴッデス、カムなど繰り返して、やっとトトパルは有人にうなずいた。
「いえっさー。ゴッデス。カム、ヒアー」
「まつみも、ここに来たって」
慶と立輪に視線を配る。ざわめく木々の中、三人は少しの間無言だった。
「うぎゃああっ!」
「どうした!」
「む、虫……何コレ、違う、ムカデっ?!」
慶の表情があきれたものに変わる。
むっつりと近づき、有人のTシャツの肩に落ちたムカデもどきをぐいっと取って下草の上に落とした。
「いい加減にしろ! 男は黙ってムカデぐらい」
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テーマ :
ミステリ
ジャンル :
小説・文学
2010-06-28(22:13) :
ピンクのイルカが夢を見た
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