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ピンクのイルカが夢を見た 3-6

 三日目にシモーヌを介して島民から聞き取った結果はこうだった。
・まつみは六日間ここに滞在した。
・彼女は一人の「白い男」ともう一人の「茶色い男」と共にここに来た。
・茶色い男はパロリンガン語を話した。上手かった。諸島内の別の島の出身者ではないか。
・白い男は英語らしき言葉を話した。この男は、まつみと英語でない何かわからない言葉で話すことがあった。
・まつみは滞在中通訳を介してでも島民と話すことはなかった。
・まつみは石像のような表情をしていた。もしかしたら、時々は笑ったかもしれない。一方男二人はよく笑い、愛想がよかった。
・男たちは工場は島を豊かにし、全ての人を幸福にすると言った。
・男たちと女神はまた来ると言った。が具体的な再訪計画を知っている者は誰もいなかった。

「『工場』ってのの正体が知りてえよ」
 有人は頭をかきむしった。帰りの船はあの島には行かないという。
「あの白人のおっさんたちは工場に投資を予定してるって言ってた。何か妙に陽気でさ」
 工場への上り道、歩きながら軽く彼らと言葉を交わした。
 ジャパンからと言った有人たちに対し、彼らはラザファスタンから来たと返した。有人にも慶にも地域名か小さな国なのか見当がつかなかったが、シモーヌが辛うじて知っていた。
『カフカスにある国だと思う』
 少し前に大統領選のニュースを見た気がするという。二人はささやきあった。
『カフカスってどこ?』
『…梨々香ちゃんにでも聞けば?』
『無理だよ。まだ『調べて』なきゃ』
 二人同時に笑う。
『あいつさ、「私知ってる」とかってとうとうと演説しまくるけど、全部元ネタがあるのを調べたってだけじゃん。なんであんなに得意そうにするんだろうな』
『でも調べ物早いし。すごいよ。将来いい仕事するかもな』
『なるほど~。でも、あいつが上司になったら僕は嫌。恐いから』
『それはオレもだ』

「工場関係者ってのがあいつを利用してたのは明白だろ。あいつは『女神』なんかじゃなかった。……慶にとってを除いてはな」
「いいよ、そんなの」
 慶はぽつっと言った。続けて。
「『工場』は人魚の涙に関係してるのかな」
「オレもそんな気がしてる」
「白い男、ってのが日本の信者ってことか?」
「かもな」
「あのね、前から言ってるけど、君たちはどうしてそうマーメイドにこだわるのかな」
 立輪が神経質に額を掻く。
「あそこがたとえどんな変に見えることを信じてようと、日本では思想信条は自由なんだよ」
「じゃあ、前の五月にまつみと一緒にここに来た男は、マーメイドの信者ではないってことですか?」
 すがるように迫った有人に、立輪はため息をついて顔を伏せた。
「これも内緒なんだけど……とある気鋭の学者さんだよ。それ以上は、ね」
「…立輪さんは何を追って島に来たんですか」
「……だから、ボクもわからなくて。この島には何かあるかもしれないとは思った。帰ったら、島民と事件との関わりを追うように進言しようと思ってる」
「僕は、島の人が日本まで来られるとは思いませんけどね。シモーヌさんも言ってたじゃん。ほとんどの人が首都に行ったことすらないって……」
「島出身で、外国も含めてどこかに移住した人はいるってのも言ってたよね? そういう人を協力者に巻き込めば……」
「何で奴らがまつみを殺さなきゃならないんですか。そりゃ工場のことで議論はあったんだろうけど、あいつの存在を消して、それで何かいいことあると思います?!」
 慶に向かい立輪は首を傾げた。
「反対派には、ちょっとだけ有利になるかな……」

 酋長宅の客間で昼食を取る。いつも通り、ケマイニの娘をはじめ一族や近所の人々がわらわら現れて食事を盛り、飲み物やら何やら気を配ってくれる。
「レウラ!」
 通りかかった酋長に人々が昼の挨拶をする。有人たちもそうと言うと、ケマイニはぼそっと同じ言葉を返して出て行こうとした。
「ミスター! ケマイニ?」
 有人は立ち上がって声をかけた。
「Your song is great.」
 ライブハウスで花をステージに投げるような気分だった。ケマイニはちらりとこちらを見ただけで黙殺する。
「カムエ……ヴァオヴァオ……ゲイニヤーゲイニヤー……」
 月夜に響いたその歌を口ずさんでみる。
「オレ頭は良くねえけど、こういうの覚えるのは得意なんだ。繰り返しのとこ、覚えちまったんだぜ」
 鉄面皮が崩れた。信じられないとばかりにケマイニは窪んだ目を大きく見開く。回りの島民もあぜんと有人を見上げた。
「あれ、ここはハムエ、だっけ? そうだよな。ハムエハムエ…」
「!」
 いきなりケマイニが有人の腕を取った。
「○×△□……」
「なあちょっと! ケマイニさん!」
 鉄砲水のような勢いで何かしゃべると構わず腕から有人を引きずっていった。



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