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ピンクのイルカが夢を見た 3-11

 トトパルはこちらをにらむやいなや森に走り込んで姿を消した。
「この野郎っ!」
「待て桐生君! 深追いしちゃ駄目だ。向こうは地元だよ」
 息を弾ませる慶の腕を立輪ががしりと掴む。
(なに、が……)
 体も頭も、完全に凍りついていた。
 トトパルは何をしようとした。あの男は、ぼくたちが「憎い」のか―
 殺したいほどの。狂暴で凶悪な―
「戻ろう」
 立輪と慶が口ぐちに言った。座り込んでいた梨々果もよろよろ立ち上がる。
「塩矢君! 大丈夫?」
「あ、はい……」
 立輪の心配そうな目を気に止めることもなく、後ろについて歩き出す。
 浜辺へ降り、白い砂に足を取られながら主集落に向かって足を速める四人。
「おい、まさかあの酋長ケマイニ、これを知ってて僕たちを先に行かせたんじゃ?……歌教えるようになってから、何だかんだ言って有ちゃんのことは可愛がってるからお前だけ…」
「そんなはずない!」
 即座に言い返した。
 あの老人はそんな男ではない。ただ古くさくて頑固な、そう自分の祖母のような人に違いない。
「ンなこと、どうしてわかるんだよ。言葉が通じるわけじゃないんだろう? だったら…」
「あれだけ膝突き合わせてればわかるぜ!」
「止めなさいっ!」
 立輪がいさめる。
 深い碧《あお》の宝石のような海を右に、ヤシの木陰を左に言葉もなく足を運ぶ。立輪は梨々果の横で左右に厳しく目を配る。気配を感じた時にはヤシの陰から男たちが浜に飛び出してきていた。
 五人の男が囲むように近づいてくる。皆すわった目で、手に手に石を持ち……
(恐い!)
 それだけで毒が回ったように体の自由が効かなくなる。立輪が梨々果を背中に回し、慶も彼女を守るように男たちに顔を向けた。
「君たちは何が望みなんだ! まずは話し合おう!」
 当然日本語で言う立輪の後ろ、有人はただ震えている。
 がああっ。そんな風に聞こえた彼らのうめき。
 近づく男たちに、立輪は振り向くとさっと慶にうなずき前に進み出る。代わって慶が梨々果の前に立つ。最初に近づいた男の棍棒を叩き落とし、逆に足を打ってその場に転がす立輪。
「あうっ!」
 ずざさっ! 立輪が砂浜に転がった。砂に赤い血が跡を残す。縹色の綿パンツの上からふくらはぎに金属の銛が刺さっていた。
(魚取り用のだ!!)
 慶と漁船に乗せてもらった時に見たー
「ボクは後で追いつく、君たちだけで逃げろ!」
 上半身を起こして立輪が叫ぶ。
「でも……」
 迷う間に男たちが囲いを狭める。
 びゅっ!
 ひゅあっ!
 右端の男が石を投げたのと、立輪の横の梨々果が砂を投げたのは同時だった。石は慶の首すれすれを通り、梨々果の砂は別の男を一歩後ずさりさせた。
「有ちゃんっ! お前は立輪さんに肩貸せ。立輪さん歩ける?」
 新たに染み出してきた血に一度立ち上がった立輪ががたりと膝を崩す。
「逃げろ!」
「ってどこへ?!」
「海へ! 浜伝いに泳いで」
「私泳げませんっ!」
「っ!」
 一人の男が梨々果に掴みかかろうとしたのを見た瞬間、慶が間に飛び込んだ。両手を組み合い、押し戻そうとして逆に押される。慶が倒れそうになった瞬間、有人は立輪を放り出して男の腹に蹴りを入れた。梨々果の腕をひっぱる別の男に体当たりした時、
「うぎゃあっ! カ、カ……」
 足元のカニに飛び上がった。馬鹿がっ! と慶の罵りを聞いた時には砂に背をつけていた。石が有人の顔のすぐ横に飛ぶ。頭をぎゅっとかばいながらも左右に目を動かした時、
 プワーーン!
 前方にぼろぼろの小型バンが姿を現した。



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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