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ピンクのイルカが夢を見た 4-5

 慶は紙に目を落としながらゆっくりと話し出した。
「まつみは書き置きをして、春に家から取っておいたパスポートを持って出ていった。おそらく、もう一度パロリンガンに行くためだ。それ自体はあいつの意志で間違いない。だけどあいつは空港どころか学校からたいして離れていない地元で殺された。その点から言えば、最初の1か2の可能性が大きいと思う」
 だんだん早口になる言葉を一度切る。
「通り魔みたいな奴だったら僕たちがたどるのは難しい。女の子なら誰でもよかったのかもしれないんだから……」
「って殺されてたのはあたしや楡崎でもよかったってこと?」
 羽美子が髪を揺らして大きく肩を縮める。
「通り魔、はない気がオレはする。その場合、なんでイルカのマスコットが携帯から抜き取られてたんだ? パスポートも盗むならともかく、中身だけ破るなんて面倒なことはしないんじゃねえか」
「身元を隠したかったとかかな」
 遠慮がちに返した有人に対し、梨々果は真っ向から慶に反論した。
「私は、人魚の涙がまつみ先輩を殺したと思ってます。証拠は今塩矢さんが言ったようなことです。身元を隠すなら、生徒手帳もパスポートもきちんと処理してゴミにでも出してしまえばいいんです。制服も脱がせてしまえばよかった」
 平然と言うのに羽美子が顔をしかめ有人も戸惑う。慶の顔を見る勇気はない。
「ストラップのことも、イルカのマスコットだけじゃなくてストラップごと外した方が簡単です。携帯内部の形式番号シールをはがしてしまえば、そもそもそれがまつみ先輩のものだとはわからなくなります。でも、犯人はそういうことをしませんでした。犯人はまつみ先輩の身元はわかっても構わなかったけれど、イルカや入境許可証《パーミット》のこととかは知られたくなかった。生徒手帳にも、まつみ先輩が行き先のメモとか書いてたのかもしれない。そう考えると、犯人は人魚の涙だと考えるのが自然だ、と私は思います」
 一気にしゃべった梨々果にしばらく三人は口を開かなかった。

 有人は彼女の話に説得力を感じた。
「……可能性は高いな」
「だからこそ別のことも考えておこうよ。犯人はパスポートや生徒手帳を別に処分しようとしてたけど、何らかの理由で急いで現場を離れなくてはならなくなって仕方なく放ったのかもしれない。携帯の話だって、単に犯人がそういう知識を持ってなかったってだけかもしれないじゃん?」
「…ま、オレも形式番号とか知らなかったもんな」
「殺人者の野郎が、梨々果ちゃんほど頭が良かったとは限らないってことだよ」
 睨む梨々果を慶が軽く取りなす。
「だけど同じように、学校近くで殺されたから、同行者と合流する前だったと決めつけることもない。この近くで待ち合わせて一緒に空港にでも行くつもりだったかもしれねえだろ?」
「じゃあ結局、なーんにもわかんないじゃない!」
 黙る慶の横、羽美子ががっかりと息を吐く。
「だからこそ、少しでも手がかりを掴みたい」
 有人はきゅっと表情を引き締めた。
「なあ。お前らの中でオレの部屋番号―白雪寮の三○二―を誰かに聞かれた奴、いるか?」
 注意深く彼らの顔を見渡す。
 三人とも意味が飲み込めない顔で首を横に振っている。例の短冊をそっとテーブルに載せた。

『パロリンガンの研究所は、古代太陽神ラーの九千年前の遺産を受け継ぐためのもの。賛同すれば、君も地球一豊かになる』

「寮の玄関には部屋割り表示は出てないだろ?」
 誰と誰が喧嘩したなどで頻繁に部屋替えがあり、書き替えるのも不便だからだ。寮の郵便委員が集合ポストに入った物を各部屋に仕分け配って歩く。だから有人は親以外には部屋番号を知らせていない。
 ならばこの匿名郵便の差出人は、どうやって三○二号室を割り出せたのか。
「何これぇ~! 漫画みたい~! 太陽神ラーって?」
 羽美子が話の流れも関せず笑い声を上げるのにため息を隠す。
「太平洋諸島に太陽神ラーの子孫伝説は広くあるようです。ですが、九千年という年代は、一昔前に騒がれた伝説あたりをネタにしただけではないかと。科学的な内容とは言えないと思います」
 今度は梨々香以外の三人が目を丸くした。慶がやっと口を開く。
「梨々香ちゃん、調べたの?」
「はい。塩矢さん、聞いてきたじゃないですか、島で。工場古代文明説」
 言う視線はあくまで有人を見ない。ため息よりも大きいいらだちを腹に隠す。
「……それより賛同すれば、というのが気になりますね」
「そーだねぇ。何をどうしろって言うのかなぁ?」
 それはその通りだ。
 そんな怪文書を、数少ない部屋番号を知っている誰が介在したというのか。
 親しい顔の人間が、裏では怪しげなところと手を組みー?
(恐い)

「……塩矢先輩は、私も含めてうちの学校の生徒を疑ってるんですね」
 相変わらず梨々香は飲み込みが早い。自分も含め、を暗い目で付け加えるのが余計だが。
「梨々香のことは疑ってない。学内の誰かが情報を流した可能性が大きいってことだ」
 寮生か、または寮生から話を聞いた他の生徒か。
「それってやっぱり塩矢っち、あたしたちのこと疑ってるってこと?」
 慌てて説明し直すが慶まで身を乗り出してきた。
「有ちゃんが僕らも疑ってるみたいだから、言わせてもらうけど」
 慶の目はいつになく鋭かった。
「有ちゃんこそ、いったい何者なんだ?!」
「え」
「おまえ、人、殺したことあるのか?」
(!!) 
 言葉が、一気に突き刺さる。
「……いったい何……」
「パウヤさんが言ってたよ」
 銃を構えた有人の身のこなしは、訓練を受けた人間特有のものだと。

『紛争地帯の軍あがりの留学生が何人かいる。彼らがパフォーマンスをして見せた時とそっくりなんだよ』
 パウヤは慶たちを詰めた。
『君たちは何者なんだ。ハイスクールガール&ボーイなんて嘘だろう!』



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テーマ : ミステリ
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