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ピンクのイルカが夢を見た 4-14

「!」
「ボクも桐生君と同じように、松法さんのことを聞いたよ。その、特別扱いだったから、コーディリアさんと直接話せたし……。コーディリアさんは、松法さんは来なかったとだけしか言わなかった。だけど、だけど……電話で話してるんじゃないか!」
 直ちにコーディリアに連絡を取り、とある支部教会が借りている倉庫で話した。
 コーディリアはその日まつみと電話で話したことをあっさりと認めた。
 マーメイドを信じられなくなったから行かない―まつみは言い、説得したが駄目だった。と
 なぜそのことを最初から警察に言ってくれなかったのか。突っかかった立輪にコーディリアは諭すように言った。

『「上がって」しまった人間とは縁が切れたから。もう関係ない』

「だって、あの子は殺されたんだよ……。少しでも、どんな手がかりでもいいから欲しいんだよ警察《うち》は……」
 立輪はそれを担当刑事に伝え、中河原に全てを告白した。マーメイドからは、アクターだった立輪をヘルパーに『昇格』するメールが来た。
「あそこでは、先に入信した人間が後から誰が入信したか知ることが出来る。ボクはだから桐生君のダイブも、塩矢君の嘘発見機を突破してのダイブも連絡をもらった。向こうは君たちが潜入入信しようとすることをボクの報告から知っていたんだからね」
 これ以上ないというほど情けない顔をされると、怒りの持って行き場もなくなる。
「君がどうやって嘘発見機をクリアしたのかだけはいまだにわからないけど」
(え?)
「立輪さん知らないんですか?!」
「ボクが知ってるのは、君がどこから来たかということだけだよ」
「彼が手配した資料は先に私が見たの。捜査を外れた人間に見せるものじゃないなと思ったから、手元でキープした」
 嘘発見機を騙せた理由は想像出来る、たいしたものねと中河原はつぶやいた。
「桐生君は新顔だから、ボクのことも、瀬賀さんのことも知らない」
「なに……!」
「瀬賀羽美子さんもとっくに信者だよ」
 彼女もやはり嘘発見機に見破られた時に説得された。
「もともと純粋な子だから、熱心だね。桐生君のことは知ってるはずだけど、ボクのことは知らない。ボクも含めた五人のうち、マーメイドに取り込まれなかったのは、君と楡崎梨々果さんだけだったんだよ」
「そんな……」
 頭が働かない。

 立輪は先日図書館で言わなかったことを教えた。
「事件と関係あるかはわからないけど、坂上真由さんのことだ。彼女の親御さんが取り乱した理由の一つは、遺骨が手元に戻らなかったからなんだ」
 真由の遺体はンマニ島に流れ着き、採取された毛髪と皮膚から本人確認がなされた。だが父親が島に急行した時には、彼女は『水葬』された後だった。
「『工場』が再び海に沈めたんだよ」
「何ですかそれ?!」
「わからない。法的には追及する手もない。帰国してから親がこちらの警察にも訴え出たから記録が残ってるんだけど、日本警察がどうこう出来る話でもない」
 と中河原が大儀そうに身を乗り出してきた。お母様からもご挨拶受けたしね……、とつぶやくと、
「君は信頼出来ると思うし、捜査協力もお願いするかもしれないから言うけど、わたしたちはここのところ、人魚の涙を最重点で捜査してきた」
 何でもないことのように軽く言う。
「ゴールデンウイークに松法さんを島に連れて行った若い動物学者は信者。大学院を出奔して半ば行方不明になってて、大学は心配してたわ。自称『工場』を経営している高山樹磨《たかやまじゅま》と高山美磨里《みまり》も元信者」
「元?」
 樹磨は将来を期待された化学者だったが人魚の涙の信者になってから研究職を辞めた。そして五年前、会社設立の直前に教団も脱会しているらしい。
「高山の研究が海洋資源の開発と直接結びつくものじゃないというところが、またわかんないんだけどね。ただ高山兄弟は犯人でないことははっきりしてる。例の岩の島だかに居着いたっきり日本に戻ってないからね」
「兄弟ですか? 夫婦じゃないんですか」
「姉と弟よ」
少しだけ間をおいてから。
「何よりも、今回同行予定で入境許可証《パーミット》が下りていたのは教祖の居軽・コーディリア・エマこと居軽絵麻だ本人った。組織的な犯行か、跳ねっ返りの誤ちなのかは知らない。けれど、疑うなって方が無理でしょ?」
 隣で立輪が堪え難そうに首を横に振る。
「はあ……」
 だからマスコミにも漏れぬよう、秘密厳守で捜査を進めたのだという。
(そうだったのか……)
 そういえば、父もそんなことを言っていたかもしれない。
 有人は絶望する必要など全くなかった。調べていたからこそ、警察は人魚の涙について大っぴらにしなかったのだ。居場所がないほど恥ずかしくなった。
「……済みません。オレたち、邪魔でしたよね?」
「そういう時もあったし、逆にうろちょろしてくれて煙幕になって便利だった時もあるから」
 上品なスーツ姿に似合わず大口を開けて笑う中河原に、有人は口を開けるだけだった。
「でも高校生にしてはちょっと危な過ぎるゲームだわね。特に、君!」
「……はい」

 帰り際、何度も頭を下げる立輪に、有人は別の話をした。
「立輪さん、頼んでおいた写真、調べに回してくれました?」
「ごめん! それどころじゃなくて! チーさんの写真だよね」
 すぐ中河原に渡すようにと強く言う。いったん部屋を出た立輪は持ってきたファイルをかきまぜてそれを取り出した。
 例の中国人? など言っていた中河原は、写真を見るとかちりと体の動きを止めた。
「これがチー・シャオヤンだっていうの。立輪君!!」


 まつみは最後に、コーディリアに聞いたという。
『コーディリアさん。人魚は風邪をひきますか?』
 ひくわけない、人魚はパーフェクトなのだ。そう答えるとまつみは黙って電話を切った。



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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