TOP > スポンサー広告 > title - 少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 2-5TOP > 少女探偵団 大阪戦争? 福あり! > title - 少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 2-5

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 2-5

「阿妃佳? いい?」
 司令から名前に呼び変えるのが任務からプライベートになった合図だ。
 香南たちは帰り、一人残った真執に誘われ肩を並べる。
「おかしいんだろ? わかってるよ」
 笑み含んだ阿妃佳に真執がすねる。
「ううん。真執らしくていいと思うけど」
 と今度は顔を赤らめる。真執は一人で外食するのが嫌いなのだ。
 ハンバーガーショップや牛丼屋でも駄目だそうだ。どうしてもという時は仕方なく入るらしいが、こうして何かと阿妃佳を誘う。
「これは……」
 着いた讃岐うどん屋の前で二人は絶句した。

 工事のため休店、のお知らせが貼ってあるのはいい。
 窓に石を投げられたような割れ目。応急措置らしいテープが痛々しい。
 白い壁にはあちらこちら不規則に凹みが出来ている。その上にスプレーで、
 ―大阪人は大阪へ帰れ!
 ―人でなし! 恥を知れ!
 と書き散らされているのを、白ペンキは隠し切れていなかった。

「当店は讃岐うどんの店です。
 おいしい本場のうどんを皆さんに楽しんでいただこうと、出汁や水までこだわってまいりました。
 決して大阪なんかの真似ではありません!
 汁が透明なのは、大阪だけではありません!
 この度は修理のためにしばらく店を閉めさせていただかざるを得ませんが、ご愛顧くださっている皆様に申し訳なく、断腸の思いです。
 店なんか壊していかずに、悔しかったらうどん打ちやがれってんだ!
 ばかやろう!  (大阪人はこしのあるうどんは打てまへん)
 
 we shall over come back!    店主 拝 」

 ちなみに括弧内は誰かがペンで付け足した落書きである。
「最後の方、かなり動揺してるわね」
 英文間違っているし―阿妃佳は言った。
「そういう問題では……いや、それが問題なんだ。阿妃佳」
 真執が強く言い切った。

 関西系の飲食チェーン店が次々に撤退していた。お好み焼き屋が火を付けられる一方、たこ焼屋台が道路占有で告発され多く逮捕された。先週は京風ラーメンの店に二人組の男が押し入り、泣き叫ぶ子どもを蹴散らして全てのラーメン丼に醤油を流し込んで逃亡するという事件が起こっている。
 阿妃佳の好物は塩ラーメンなので全部醤油味にされても困る―それはおいといて。

 真執が選んだ洒落たカフェに入ると、女の子たちが羨望のまなざしをちらちら向ける。いい男とデートをしていると勘違いしているのだろう。
 チョコレート色の壁の前、奥の席に座ると、真執は腕を背もたれに投げ出して言った。
「大阪、マジにきな臭いんだ。『うち』の石油がひっぱりだこでさ」
「真執?」
「戦争には石油が必要だ」
「……まさか!」
 信じられない。
「大阪は国内よ」
「『大阪は日本じゃない』とすればいい」
 少し前、自分は同じことを香南に言った。それは少女探偵団限定の話だったはず。
「西南戦争までは『内戦』だってやってたんだ。何の不思議はない」
 真執は声をひそめ、阿妃佳も顔を近づけた。 
「……ごく最近、大阪の外国領事館が家族を府外に転居させた。それも一カ国じゃない」
 見返すと、彼、ではなく彼女は重々しくうなずいた。
「最初が韓国。それから中国。台湾の事務所も同様だ。大手マスコミでは抑えてるはずだが報道はしてないな」
「日本の情報を手に入れるのが早そうな国ばかりね…」
「天……何とか六丁目の扱いが鍵になるだろう。こちらはあくまで僕の見解だが」
 ロコモコとタコライスが運ばれてくる。箸を手に阿妃佳はぽつっとつぶやいた。
「……香南のこと、心配だわ」
 彼女は大阪へ進学するー
「それより香南ちゃんにはどう落とし前を付けさせるつもりなんだ? 今回の件」
 やんわりと詰めてきた。
「言うことは言ったわ。後は本人の自覚に任せるしかないわね」
「あいつに自覚なんてあるもんか! 『だって司令はろくに取り合ってくれないし、警察も頭ワルイなと思ったから「真実」を教えてやったんだって! 偉いでしょ?』だろう?」
 さすが役者、本当に香南がそこにいるようで阿妃佳は眼鏡の弦を押えた。

『少女探偵団では団長が責任を取る―って、いつも司令言ってるじゃない? 頼むわね!』

 香南は開き直った。
 捜査妨害になるだけでなく、犯人として追われかねないと諭しても、
『あたし、安全策ぐらいやったもの』
 と十歳にしては豊かな胸をどーんと張っただけだった。
(指示を出すのだから責任も取る、とは言っているわよ。だけどそもそもあんたは、人の指示なんか全然聞きゃしないだろーがっ!)
 赤鬼のように角を生やす。
(私、リーダーなんて向いてないのかしら。やはり)
 そして今さらながらに落ち込む。
「……君は香南ちゃんに甘い」
「そうかしら」
 本当はそうだ。ごめんと心中真執に手を合わせた。
「大阪のことは目が離せないが、あいつが団長になる可能性がなくなったのにはほっとしたよ」
「それはわからないけど」
「え?!」



 目次 

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

小説へはこちらから
最新記事
最近の有無那
ボリウッド4のうち3つまでは見ました。あとは「きっとうまくいく」のみ。ついでにインド映画の御大アミダーブ・バッチャン、ハリウッド初出演の「華麗なるギャツビー」も見たいです…(7/9)
有象無象
連載メルマガ
現在連載中のメルマガはありません
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。