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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 3-1

「ここのどーこが横浜なのよ?! 海はどっち? 横浜って言ったら窓を開ければ夕日が見える水平線、って歌があったでしょ?」
 ―全然違う。
 造成したばかりらしい台形の敷地の上、まばらに並ぶ団地群を眺めながら香南はぶーたれた。隣で理央んがでもぉ、確かにここ住所は横浜市だしぃ、と首を縮める。
 乗り換えて行くのは塾ぐらいの香南は、実は電車路線がよくわかっていない。だから連れてきてもらったのに文句を言うのは、彼女ならではである。
 おまけに今日の仕事は理央んの任務で、香南はお守り役に過ぎない。それがまた気にくわない。
 今回成果をあげれば次期団長はより確実になる。阿妃佳はえこひいきだが、そういうところに私情は挟めない小心者だからだ。
(あたしが出来ないわけないでしょ。頭イイんだから)
 何で認めない!
 自然公園に入るといきなり風が香南たちの回りを吹き抜けた。
 起伏のあるいくつもの丘に広く芝が生え、舗装された小道がうねって続く。右も左も、真っ直ぐに伸びる木々の森に囲まれていて、遠くには吊り橋のようなものが見える。
 犬を連れたおじさんやおばさん、子連れの母親や女子高生グループなどがまばらに歩く中、敷地が広いせいか風の音以外は妙に静かだ。
 昨年末の女子中学生殺傷現場に向かう香南と理央んの春夏コンビだったがー

「広い広い! 走るぞー」
 理央んはいきなり芝生に跳ね入り、両腕を広げくるくると回った。次に両足をいっぱいに使ってスキップを始め、めくれたワンピースの裾から黒いオーバーニーと太股の境が露になった。
 顔を覆いたくなる。
「理央ん。高校生がスキップは止めてくれない? 小学生も五年にも成ればやらないって」
「走りたいんだもん! 卵が言ってる」
「白い卵があるの?」
「うん!」
 あるわけない。曇り空を見上げてため息を吐く。
「おしっこ~~~! ねえ香南ちゃん、トイレどこにあったっけ?」
「さっき通ったばかりでしょ! そこ上って左の池の手前!」
(こ、高校生が「おしっこ」って……)
 一目散に駆けて行き、少しして戻ってくる。
「ごめんね。今度の白い卵はおしっこ漏らしそう、って言ってたんだ。多分ちっちゃな子の卵じゃないかな」
「だからってあんたがトイレ行く必要ないでしょっ!」
 園内図を見るに二エリア先に現場の小屋がある。園芸教室等に利用されていたが、事件以降閉鎖されたままだという。

 ゆるやかに上り下りする小道を進むと、いつの間にか人影も見えなくなった。
「香南ちゃん。あのさ……ちょっと恐くない?」
「何で? あたしが思うに、犯人はもうこの現場には戻らないと思うけど」
「じゃなくて。お化けとか」
「きゃはははは………幽霊なんているわけないでしょ! はーっはっはっ…」
 そっくり返りすぎてずるりと足をとられたのを、理央んに引っ張って助けられた。
 実は暗い所は少しだけ恐い。何かがいる気がして早足になってしまうのだが、そんなことは内緒だ。えへん、と咳払いして話題を変える。
「……だいたいさあ。H点実技なんてさせる方がよっぽどせーかく悪いと思わない? 三百人の受験生に洗面台は六個。それで突き飛ばしたり押しのけたりは減点。だけど十分後の集合に遅れたらその分だけ減点。いー加減に顔洗って目やにがついてても石鹸が残ってても減点。試験監督の先生って、人が苦しむのを見て喜ぶ変態サドだって思わない?」
「そんなこと考えたこともなかった。でもそーだねーっ。香南ちゃんってほんと頭イイね」
(うー)
 聞かなければよかった。

 崖を背にして、立ち入り禁止のテープが巻かれた現場の小屋が見えてきた。
 木擦れの音が頭上で不規則に騒ぐ。嫌な感じだ。
 いや、人が死んだ場所だからってどうってことはないはず。見下す調子で尋ねる。
「白い卵見える?」
「うん」
「……理央ん?」
 最初に、全力疾走したように鼻息が荒くなった。
 次に背中が曲がりそのまま固まった。
「理央ん、ちょっと大丈夫!」
 目は見開かれ、両腕をやたらめったらに振り回し出した!
(うわっ、なんかおかしくなっちゃったな。こういう時は……逃げる!)
 これぞ強者の選択!
 ガシッ!! 体が引き戻される。
「ぎゃっ! 理央ん止めてよ。自分がナイのにあたしがCカップだからって胸押しつぶすのはや、止めなさいって……」
 軽口を叩いても声の震えは隠せない。がしりと腕にはめ込まれ香南は動けなくなった。大きな生暖かい震えが背後から伝わる。
「いやああああああああああああああっ!!」
 地底から響くような、人外の叫び。痙攣しながらも腕は鉄のように固い。
「い・や・あ……!! いや、いやあああああっ!」
「な、何が嫌なのよ?!」
 目を凝らしても人っ子一人見えない。空は暮れ始め、香南と理央んは少しずつ薄い闇で包まれていく。
「わあああああああんっ! 殺したあああああっ!」
「誰が殺したっての! ちゃんと主語を入れて話しなさいって! 高校生なんだからわかるでしょ。主語と述語の主語っ!」
「誰…………白い卵」
 耳元で怪物の声が息と共にうめく。
(本当に?!)
 阿妃佳の読み通り、理央んは犯人の卵を見ているというのか? まさか。
「わ、わたしがお姉さまを殺したあああっ!」
「お姉さまって誰よ、も、もうっ!」
「あああああああああああ」
 鋼の腕がぎりぎりと体を絞り上げる。息が、苦しい。こんなに締められたらつぶれてしまう! 
(どうしよう。あたしには……誰も助けてくれる人なんていない!)
 パパもママも、クラスの子も塾の子も。
 神さま仏さまお化けなんてデッチあげもってのほか。
 見上げる空は暗いだけで何も見えない。風が冷たい。
「ぐ……っっ……」
 どちらからの震えか揺れまくる手をポケットに突っ込み、やっと携帯を探り当てる。
「司令っ!」



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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