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少女探偵団 大阪戦争? 福あり! 3-8

『……わたし、わからないんですけれど。戦争を起こそうとするなら、殺すのは敵の指導者じゃないんですかしら? 大阪のトップは誰になるんでしたっけ?』
『いないねん』
 モニタの向こう、姿勢を正して言ったラーダにさと美が答えた。
『府知事は先月逃げおってな。行方不明やったんやが、バンコクからタイに入ったそうや。副知事の一人は入院して、もう一人の府知事だけが働いとるけど、彼がどーこー動かしてるってことではあらへん。府庁の人とかが頑張ってくれはってて、あとは警察の人やな』
 通常以上にパトロールや取り締まりを強化しているという。
『本部長の鳳さんって大した人らしいで。ただこれからは厳しくなるかもしれん……生駒山の出身でな」
「イコマ山?」
『大阪と奈良の境や。鳳さんは生駒の奈良側、聖天さん近くの出身なんやって。お父さんとお母さんが今もそちらにおるんやそうやけど、自衛隊に囲まれてもう軟禁状態って話でな』
 少しの間の後、ラーダが尋ねた。
『司令。その警察の本部長さんや府庁の人が標的になるならわかりますけど、小学生や中学生の女の子を狙うのは、わたしにわかりません。それに、いくら罪を大阪に着せようと思ったとしましても、そこまで残酷なことをするでしょうか? ニュースサイトにfundamentalistが活動しているとあったんですけど、その辺とは関係ないんですか』
「ないわね」
 言いながら阿妃佳はがっくりと脱力した。
「『大阪原理主義者』って何をやってるか、知ってる?」
 徒党を組んで都内のそばうどん屋に押し入り、彼らの一人が開発したという秘薬を丼に垂らす。
『うどんの汁が黒いなんて邪道や~! 大阪もんなら白や!』
 ニュースリポートを再生する。

「するとどうでしょう! 見る間にうどんのスープが透明になり、同時に店主は真っ青になったのです。実はこの店、一ヶ月前までは関西風のうどん屋でした。大阪との緊張が高まってからスープを醤油で味付けた関東風に変えた、と見えていたのですが違いました。色は濃くなるが味は関西風という特殊調味料『なんちゃって黒やんけ』が大阪府内の工場で『密造』されていることが明らかになったわけですが、府警は特に問題なしと捜査を打ち切っています! 逮捕されたのは大阪原理主義グループ『あほかいな』のメンバーで、ほかに『ほんまかいな』『そうかいな』といったグループも活動中と言われています」

 ラーダは黒目がちな目を渦巻きのように回した。
『わたし……わかりませんです……それが原理主義のテロリストですか? わたしやっぱり日本国籍を持ってるのは無理があるんですかしら?』
「心配しないで。私たちもわからないから」
 ニュース映像の再生を続ける。

 下に大阪・難波との字幕。
『そりゃ黒いスープは気持ち良くはないけどな。でもまあ、どうでもええやんけ。麺なんて旨ければ』
『そやそや! 大阪原理主義なんて言ってるらしいけどな、あんなんほんまもんの大阪人あらへん。近江商人あたりとちゃいまっか?』
 わいは阪神原理主義や~! と六甲おろしを歌い出した男から画面は東京のスタジオに戻る。
『どう思います?』
 女性キャスターに聞かれた白髪男は、重々しくうなずいた。
『信じられませんね。われわれが大阪難民らによる犯罪との戦いに真剣に取り組んでいる時にどうでもいい、など。実際に人の命が失われているんですよ。横浜の女子中学生誘拐監禁と聖蓮女学院入試のおぞましい殺人もおそらく大阪人の仕業でしょう? これはもう―』
『……もう?』
『われわれと大阪とは相いれません。共存は、不可能と私には思えますね』
 

「ラーダ? 理解してほしいことはね。うどんの汁の色なんて『どうでもいい』ことすら許容出来ない敵意が、大阪以外の地域に形成されているってこと。この憎悪は容易に戦争に踏み込みうる」
 ラーダは目をうるませてうなずいた。
『泣きそうな顔するなや。美人のラーダちゃんにそんな顔されたらうち困ってしまうわ。大阪人は無駄な戦争はせん! ……ずっとそうやったんや』
 少しだけさと美の声が低くなったのが阿妃佳の胸をついた。意識して無表情を装う。
『うち、そろそろ予備校の時間やから。予備校が呼びこけこっこー! ほな』
 同情は間違いだったかと考え直した。
『……日本政府と大阪府では妥協の余地がないってことですね。わかりました。でも、そこで女の子を殺したりするのはやはりわかりませんです』
 ため息をつく。
『ただ……真執さんの携帯ハッキングのレベルの高さからは、それだけの技術のある人間を使える「力」が背後にあると考えられます。だとしたらどうなりますか? 真犯人は日本政府ですか?』
 憂いを込めた目で見つめる。阿妃佳は答えず真執に話を振った。
 香南は、みかんの最後の一房を握ったまま、まだ考え込んでいる。
「国会議員は実はそう反大阪には乗り気ではない。『内戦』で得る所は少ないからな。進めているとしたら『清大会《せいたいかい》』の連中だろう。筧雅比呂や父親の議員も会員だ」
 先ほどの写真週刊誌を示す。
「清大会…どこかで聞いたことがあるけれど……」
「政界や財界のトップや高級官僚たちの勉強会だ。司令なら、新聞か何かで見ててもおかしくない」
 違う。直接自分の耳で聞いた気がする。だが自分には真執のようなVIPとの付き合いなどないから、そんなはずはない。
「こーきゅーかんりょーでどういう人? ていきゅー官僚とかちゅーきゅー官僚とかってランクがあるのぉ?」
「あんたね! 要は国家公務員の中でも、トップに近いところにいる人のこと!」
「東京の霞ヶ関あたりにいるすっごく偉~いお役人さん、って言った方がわかりやすいかな」
 香南の罵倒説明には首を傾げ、真執の言葉に理央んはようやくうなずく。写真週刊誌上の筧を指さして一言。
「この格好イイ人もそうなんだ?!」
 一瞬で六畳一間全ての空気が凍った。



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テーマ : ミステリ
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